割と「バンドあるある」的な話だと思いますが、人によっては非常に悩ましいケースでもあると思います。
そこで今回は、コピー曲にキーボードパートがない場合のキーボーディストの立ち回り方について考えていきましょう!
・キーボーディストだけどアレンジを自分で考えたことがない人
・決まったアレンジがないとどう演奏したらいいか分からない人
目次
まずは状況整理

コピーバンドのはずなのに…コピーする楽曲にキーボードパートがない…
まずどうしてこのような状態に至るのか状況を整理してみましょう。
以前の記事でコピーバンドの活動形態について触れました。

この中でコピーバンドには大きく次のパターンがあることを説明しました。
- 1点集中型
ある特定のバンドをカバーするケース - ジャンル特化型
ある特定のジャンルに特化してコピーするケース - 雑多になんでも型
メンバーが好きな曲を持ち寄ってコピーするケース
①1点集中型
このケースは特定のバンドに限定して活動するタイプであり、キーボーディストとして加入するからには、メンバーにキーボーディストが在籍するバンドであることが前提でしょう。
そうであれば「弾くパートがない」という今回のような問題は基本的に発生しないはずです。
ただ例外はあります。正式メンバーにはキーボーディストはおらずサポートメンバーを迎えている場合です。この場合はリリースされた音源にキーボードが入っていないケースもあります。
運悪く?そういった曲を他のメンバーが気に入って「やろうやろう!」と気合入れている場合がありますが、そういう場合でもあきらめないでください。ライブなどではサポートメンバーがキーボード入れていることが多いので、そういったものをYOUTUBE等をみて参考にしてみましょう。
聖飢魔Ⅱにはキーボーディストはいませんでしたが、サポートメンバー(聖飢魔Ⅱ的には「準構成員」)として怪人松崎様がいました。
音源にキーボードが入っていない曲でもライブでは怪人松崎様が何らかのフレーズを弾いていたため、そういったものを参考にしていました。
②ジャンル特化型 ③雑多になんでも型
問題は②、③です。このケースでの活動はコピーする対象のバンドが固定されていないため、キーボードパートが存在しない曲が候補にあがることがあります。
もっともメンバーの関係性によっては、最初からそういった曲を候補に入れない配慮がある場合もあるでしょう。
でもそういった配慮がない場合もありますし、むしろこういう条件のコピーバンドに加入している時点でこういうケースは想定しておきましょう。
やっぱりやりたい曲をやる!っていうのが、この活動タイプの正道でしょうし、よっぽど技術的に手が届かないレベルでもない限り工夫で十分対応できます。
ということで、次の項目から、アレンジするうえでの考え方を整理します。
アレンジの考え方

キーボードは色々なことが出来るだけに、考えなしに音を出していると曲の中に存在感を発揮できないだけでなく、曲自体の雰囲気等を損ねてしまうことにもなります。
そこで次のような点を考慮してみましょう
- 曲をどのような雰囲気で聴かせたいか
- 弾く・弾かないを明確化する
①曲をどのような雰囲気で聴かせたいか
キーボードというパートは、ある意味曲の雰囲気をガラッと変える力を持っています。
その一番大きな要素は音色です。
こと音色に限れば他パートの追随を許しません。
- ストリングスで優しく包んであげるのか
- ピアノで印象深いフレーズをキメるのか
- ブラス系でファンキーテイストを加えるのか
- オルガンでロックテイストを出すのか
- シンセ系音色でリズミックに攻めるか
上記のとおり音色と弾き方によってだいぶ曲想は変化するものです。元々の原曲の雰囲気を大事にするのか、割と大胆に変えに行くのか、そんなことも可能です。
それだけに、まず自分がどのようにこの曲を聴かせたいか…という意識が大事です。
何故なら、自分がこうしたい、という前向きな気持ちは音にも出るからです。
そして当然のことながら自分だけの想いだけでなく、メンバーとも意見交換することが必要ですが、そういった際も自分の想いがあれば伝わりやすいです。
キーボードアレンジはいろんな選択肢がありますが、逆にいうとそこがキーボーディストの面白い、楽しい部分だと思います。
キーボードパートは曲想を左右するポジション。
どういう風に曲を聴かせたいかに想いを巡らせ音色等を選択する
②弾く・弾かないを明確化する 「空白の美学」
まずはっきりさせておきたいのは「弾くことが正義!」…ではありません。
何か弾かなきゃ…と焦る前に、どの部分を弾くか、どこで引くか…同じ「ひく」でも前にでる部分と後ろに控える部分を考えましょう。
何故なら、常に全力では本当に盛り上げたい部分との差がなくなり、平坦な曲になってしまうからです。なんでもメリハリが大事です。
例えばこんな曲構成があったとします。その時の弾く箇所として…
- イントロ : 弾く
- Aメロ : 弾かない
- Bメロ : 弾かない
- サビ : 弾く
- Aメロ : 弾く
- サビ : めっちゃ弾く
- アウトロ: 弾く
イントロを弾いた後サビまでキーボード弾きません。2コーラス目は普通に弾いて、2回目のサビは音も厚くして思いっきり弾く…ちょっと極端な例かもしれませんが、このようにするとサビがひときわ映えるのです。
元々音楽には「休符を演奏」するという考え方があるとおり、いかに音を抜くかというのが大事だったりします。空白の美学というやつです。
何か弾かなきゃ…という先入観を無くし、メリハリを意識したアレンジを心がける
具体的なアレンジパターン

最後にいくつか具体的なアレンジパターンを考えてみましょう。
ただし、ここでのアレンジはオリジナル曲のアレンジではなく、コピー曲のアレンジであるため制約があります。
オリジナル曲であれば、最初は何もないため、メンバーでセッションしたり話合ったりして詰めていくことができますが、コピー曲の場合はキーボードパートが無くとも既に完成された楽曲であるため、それだけのスペースが確保されていない場合もあります。
そういった前提で考えてみましょう。
- 少しばかりのエッセンスを加えるパターン
- ギターと積極的に絡むパターン
- 新しい要素を加える・曲想を大胆に変化
①少しばかりのエッセンスを加えるパターン
こちらは曲の骨格をあまり変化させないパターンです。
例えばピアノやオルガン音色で白玉コードを弾く、というのが一番オーソドックスで無難なパターンになります。小節の頭でコードを弾いて伸ばす。これなら弾くことのハードルは一気に下がると思います。
あまり他のパートとぶつかることもないし、コード感を補完するという役目も担えるため、間違いはない対応ではあります。
欠点としては演奏が退屈、つまならない…です。
まぁライブでは他の曲も演奏する訳ですし、何曲か裏方に徹し黙々と支える曲があっていいと思いますが、そんな中でもちょっとした工夫で変化させることができます。
例えばオルガンで白玉コードを弾く場合、リアルタイムでドローバーを操作して音色と音量を変化させることです。これをやると音に立体的な表情が付くためおススメです。
同じような効果でロータリ―の切り替えスイッチが付いている場合は、盛り上がる箇所でスローからファーストへ切り替えてみましょう。めっちゃ盛り上がります。
あとは音を入り始めはグリスから入るなど、オルガンの場合は表情付けの工夫を色々とすることができます。これをやるだけでも弾くのが楽しくなりますよ。
②ギターと積極的に絡むパターン
イントロなどでギターが印象的なフレーズを弾くことが多いですが、その役割を入れ替えるのもアリです。
例えば、元々ギターで弾いていたイントロのメインフレーズをシンセのリード音色で弾く、それだけでも曲の雰囲気は少し変化しますが、この時ギターはバッキングに回れるので、音の厚みも増します。
そしてメインフレーズというのは曲中に何度も出てくること多いですが、例えばサビで再度そのフレーズが出てくるときは、今度はギターで弾く。そうすることでイントロとの対比もあって新鮮に聴こえたりします。
また特にロックであればフレーズをユニゾンで弾くのもいいと思います。
ロックは勢いですから、中域、高音域等の棲み分けを細かく意識するよりも、ユニゾンで太い音を出すのも効果的だと思います。
または多少高度ですが、ハモりフレーズで攻めるともっと変化を感じることができます。この時左手で白玉コードを弾ければベストです!
ロック系の曲であればこのようにギターとの絡みでシンセの存在感を発揮しながら曲に変化をつけることができますので、メンバーと相談しながら色々試してみてください。
③新しい要素を加える・曲想を大胆に変化
余裕があればもっと冒険してみてもいいと思います。新しい要素とは、元々原曲にはなかったフレーズ等を考えて放り込んでみるというものです。
例えば、曲の隙間(ボーカルの隙間)に合いの手のようにオブリを入れてみる。
オブリとは「オブリガード」の略で、メインメロディを引き立てるための短いフレーズのことです。こういうのをブレス系音色で挟み込むことで、曲のクオリティがぐっと上がったりします。
ある程度の経験のあるキーボーディストさんであれば、コードアレンジを取り入れるのも効果的です。
元々鍵盤が入っていない楽曲にピアノを入れるだけでなく、テンションコードで入っていく。更に16分で裏を意識したバッキングを入れることで、かなりオシャレな雰囲気をだすことができます。
あえてロック調の楽曲に、こういった要素を入れていくのも面白いと思います。
こうやって考えていくと本当にアレンジは自由だなと思いますが、結果としてハマる、ハマらないというのはありますので、試行錯誤してみるのがいいでしょう。
まとめ
コピーバンドにおけるキーボードパートについて考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。
コピー曲は確かに完成形が提示されているため、演奏の練習のみに注力すればいいので楽かもしれません。
しかしバンド活動では「自分なりのアレンジをする」という楽しみも非常に大きいものです。特にキーボードパートは機材的にも、立場的にも色んなことができるためやりがいがあります。
そういった意味ではいきなりオリジナルバンドでバリバリアレンジするより、キーボードパートのないコピー曲から始めるのも順序としてはいいのかもしれません。
是非、メンバーとコミュニケーションをとりながら、色々試してみましょう!
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