ピアノを始めとする鍵盤楽器は一般的に「両手」で弾くもの、というイメージがあると思います。
しかし実際は弾く楽器や曲、演奏スタイルによって右手と左手の役割は臨機応変に変化するものなのです。
譜面どおり弾いている分には大丈夫ですが、自分でアレンジしたりバンドを経験すると分からない部分が出てくると思います。
そこで今回は演奏スタイルごとに、それぞれの役割をまとめていきたいと思いますので、是非参考にしてみてください。
演奏スタイルによる右手と左手の役割分担
ではさっそく進めていきますが、今回はあくまで各スタイルの中で”一般的なパターン”という前提で説明します。
弾き語り
左手 | 右手 |
ベース(ルート音) | コード |
ピアノで弾き語りを行う場合はメロディを歌で表現するため、ピアノは伴奏を行います。この場合左手はルートを基調としたベース、右手はコードを弾くことが基本です。
一人で楽器演奏及び歌唱を行う弾き語りでは、最低音を出せる左手でコード進行を示すルート音とリズム感を出してあげる必要があります。
ルート音を含んでいれば左手でコードを弾いても構いませんが、メジャーやマイナーといったコード感は中域から高音部で弾いた方が抜けてくるので右手で弾くことが基本です。
こうした理由から左手はルート音を中心に弾くことが理にかなっています。なお、実際の奏法としてルートはオクターブで弾き、適度に5度やその他の音を加えていくと曲に表情を加えられます。
ジャズピアノ(ピアノトリオ)
左手 | 右手 |
コード | メロディ |
ピアノ、ベース、ドラムから構成されるピアノトリオで演奏する場合は、左手がコード、右手がメロディを担当するのが基本です。
左手のコードに関しては「3度+7度+テンションノート」の組み合わせで弾くことが多く、ルートや5度は省略可能です。
【省略可能な理由】
- ルート:ベーシストが弾くため
- 5度 :ルートの倍音という位置づけであるため(5度はコードの性質を左右しないが、加えれば音が安定するという存在)
ただ、実際は”省略可能”というよりはベーシストを邪魔しないようむしろ”ルートは弾かない”のニュアンスの方が強いでしょう。
ジャズの左手で入れるコードは「コンピング」と呼ばれ、裏拍にタイミングよく入れるとジャズっぽくなります。(本来はジャズに限らずコードバッキング全般を指す言葉ですが、ジャズ・ブルース界隈で使われることが多いイメージです。)
またベースソロなどに入るとピアノはバッキングに回ります。その際は左手(ルートと5度等)と右手(3度と7度、テンション等)で一つのコードを弾く場合は多いです。
ソロピアノ
左手 | 右手 |
コード(ルート含む) | メロディ+コード |
ピアノ単体で勝負するソロピアノの場合は、当然一人でメロディ、リズム、ハーモニーを表現する必要があります。よって左手はルート音を含むコード、右手はコードを含むメロディを弾くことが多いです。
左手の「ルートを含む」という表現ですが、単純にコードの構成音にルートを含むという場合もありますし、一度低音域のルート音を叩いてからペダルで音をつなぎ、更に上の音程のコードを弾くという場合もあります。
右手は単音のメロディだけでなく、より彩りのある雰囲気を出すため、メロディの始まりや強調する箇所ではコードを弾くとよくなります。
ジャズのソロピアノの場合は、ウォーキングベースを入れるなど、同じソロピアノでもジャンルによって様々なバリエーションが考えられます。
ただ繰り返しになりますが、左手でコード進行とリズムも示しつつコード感も出す、という役割は共通するところです。
バンド
左手 | 右手 | |
パターン1 | 各種コントロール操作等 | フレーズ |
パターン2 | フレーズ(コード) | フレーズ(コード) |
パターン3 | ベース(ルート) | コード |
バンド(ポップスやロック等のポピュラー系)のキーボーディストの場合は曲によって左手と右手の役割が変わります。
パターン1 片手で弾く
一番基本となるパターンです。
バンドの場合はベーシストがいるため、コード進行のルート音はベーシストが担ってくれます。よってムリに左手を入れるよりは右手に集中する方が得策です。左手は音色切替やベンダーやモジュレーションなどのコントローラー類の操作に集中することができます。
パターン2 両手で複数の音色を弾く
バンドのキーボーディストの場合は曲に応じて複数の音色を同時に弾くことが求められます。例えばストリングスとピアノ、オルガンとシンセリードといった具合です。
方法は大きく2通りあります。スプリット機能を使用する場合と複数のシンセサイザーを使用する場合です。
◆スプリット機能を使用
シンセサイザーのスプリット機能を使用するば、鍵盤上に自由に音色を配置して弾くことができます。上図のようにストリングス音色とピアノ音色を配置して、同時に別々のフレーズを弾くことが可能です。
スプリット機能についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
◆複数の鍵盤を使用
ステージ上に複数の鍵盤を配置して両手を使ってそれぞれ弾くケースです。ポップス等で音を厚くするためにストリングスやパット系音色で音のカーテンを作り、右手でフレーズを弾くというパターンはよくみられるものです。
パターン3 ベースとコードを組み合わせで弾く
バンドの中の演奏とはいえピアノアレンジ部分を弾く場合は、なかなか左手を省略しずらいものがあります。
このような場合は弾いてもいいと思いますが、ベースとユニゾンするなどの工夫をしましょう。あまりバラバラだとリズムのズレにつながります。
まとめ
”両手でピアノを弾く”という行為は同じでも、音楽のスタイルや曲によってこんなにも違うんだということがお分かりいただけたと思います。
これはバンドアンサンブルの役割分担と考え方がつながる部分があります。ドラム、ベース、ギター、キーボード…音楽を構成する「メロディ」「リズム」「ハーモニー」を各パートがそれぞれの担当することで楽曲が成立しているわけです。
ピアノを一人で弾く場合はその役割をどっちの手に持たせようか…そう考えていくと分かりやすいと思います。
この辺の考え方が分かれば、あとはそれを実践するテクニックを磨くのみです!
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