コードの勉強シリーズにおいて、ダイアトニックコードというものを説明するために、「スケール」について説明しました。
このスケールについては、多くの教則本に「スケールを弾く練習をしましょう(スケール練習)」という内容で掲載されています。
しかし「何のためにその練習をするか」という部分が深堀されていないことが多いため…
…と深く考えずに練習する人が多く、結果、単なる指を動かす練習になってしまう…という流れになりがちです。
そこで今回はメジャースケールの仕組みを振り返りながら、
- なぜスケール練習が必要なのか
- スケール練習をするとどんな「いいこと」があるのか
といったところを中心に、目的を整理していきたいと思います。
目次
メジャースケールのポイントをおさらい
前回の記事でまとめたメジャースケールのポイントです。
- メジャースケールとは、スケールを構成する7つの音の間隔が、全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音となっているものをいう。
- あるスケールを基本とした曲のキーは、そのスケールのルート音を用いて表す。(例:Cメジャースケールを使った曲はCメジャーキー)
つまりスケール(音階)とは、音の並び順のことで、それがメジャースケールの場合は全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音の順番で7つの音が並ぶことをいいます。
スケール練習は、ただ漫然と音階を弾いているだけでは、”何かが身についてる感”があまり実感できないと思います。
きちんと目的や効果を意識することで、有効な練習になり得ます。
スケール練習の目的・効果
多くの教則本には「スケール練習は大事!」と謳われており、実際の練習方法もよく載っていますが「何のために行うのか」という部分が割と掘り下げられていないことが多いです。
その結果、ひたすら単純なスケール練習を行っても生かせていない人が多くいるように見受けられます。何でもそうですが、目的や意義を意識したうえで行うと、同じ練習でもとたんに有効性が増すものです。
私が個人的に感じているスケール練習の目的・効果は以下のとおりです。
- 運指の安定性向上
- 鍵盤間隔の把握
- 耳コピがしやすくなる(キーの特定)
- アドリブによるフレーズが作りやすくなる
では、一つずつ見ていきましょう。
①運指の安定性向上
ピアノは両手の指10本をフルに使用して弾く楽器です。
しかしながら、人間の指の力の強さは均等ではなく、薬指や小指の力は非常に弱いです。特に薬指は独立して動かしにくいはずです。(これは腱の構造上の問題上ある程度やむを得ないですが)
その力のアンバランスさは「音の粒のバラつき」として明確に現れます。
「音の粒のバラつき」とは、音の大きさだったり、テンポに対するバラつき(モタったり、走ったり)を指します。
これが聴く側に対して上手く聴こえるか、下手に聴こえるかを分ける大きな要素であると思います。
このバラつきを是正するのにスケール練習は非常に有効です!
基本的なスケール練習は、様々なキーの音階(メジャー、マイナー、その他)を、5本の指(両手で弾く場合は10本)を全て使って弾きます。
つまり、使う指に差がないので、薬指や小指も均等に鍛えていくことができるのです。
しかし、ただ動かしているだけではあまり効果はありません。
効果的に行うには、
メトロノームでテンポを設定し、そのテンポに乗りながら、音の粒を「意識」することが大切です。
スケール練習をある程度ルーチンとして練習に組み込むことで、指の動き方がだいぶスムーズになると思います。
もう一つ、スケール練習では親指の指またぎを行う必要が出てきますが、この指またぎもスムーズな運指を行う上で必要な要素です。
スムーズな運指はクラシックピアノのように難解なフレーズを弾く音楽には当然求められるスキルですが、そのほかハードロックキーボード等を志向し、テクニカルなキーボードソロを弾きたい!っていう場合も、こういったメカニカルなトレーニングは欠かせないでしょう。
- スケール練習は弱い指を鍛え、音の粒を揃えるためにも有効
- スケール練習のようなメカニカルなトレーニングは、テクニカルなソロ等を弾く場合に必要
②鍵盤間隔の把握
ピアノを弾く際、例えば隣り合った鍵盤であれば目で見なくても「F」→「G」という感じで弾いていくことは簡単ですが、「F」→「B」のように音が跳躍していると不安でついつい鍵盤を見ることが多いと思います。
でも鍵盤とにらめっこの状態では、譜面を見ながらの演奏に支障がありますし、バンドの場合はメンバーとのコミュニケーションや周囲の音に気を配ることも難しくなります。
そこで大切になるのが、鍵盤間隔を体で覚えていくことですが、この感覚を養うのにもスケール練習は有効です。
ポイントは次の2点です。
- 間隔の把握
スケール練習に音が跳躍するパターンを取り入れることによって、音と音の間隔(距離)の感覚を体(指)に馴染ませることができます。 - キーによって使用する黒鍵の把握
様々なキーでスケール練習を行うことにより、各キーで使用する鍵盤を把握できます。特に各キーでどの黒鍵を使用するか把握できれば、ある程度鍵盤を見なくても鍵盤の位置を把握しやすくなります。
当然ながらこちらの練習も、間隔を養うという意識を持って行う必要があります。
③耳コピがしやすくなる(キーの特定)
バンドで曲のコピーを行う場合、バンドスコアがない場合は耳コピ(音源を聴いて弾けるようにする)を行う場合があります。
耳コピで曲を正確にコピーするのは難易度が高いですが、いくつかの手順があります。
その手順のうち、まずは「曲のキーを特定」する必要がありますが、そのキーを特定するためにスケールが役に立ちます。
以前の記事でも触れたように、曲のメロディは、8~9割程度がそのキーのスケール音で構成されています。よって、メロディを鍵盤で弾いていくと、どのキーのスケールを使用しているか、ということが把握できるのです。
具体的には黒鍵(♯や♭)の数からあたりを付けることができます。
黒鍵が一つも無ければCメジャーかAマイナー、黒鍵が3つならAメジャーかF♯マイナー、といった具合です。
キーが特定できれば、使用するコードの種類もある程度特定され、曲の骨格が特定しやすくなります。
各キーのスケール構成音(特に黒鍵)を把握していることで、曲のメロディから使用スケールを割り出し、曲のキーを特定できる。
④アドリブによるフレーズが作りやすくなる
ジャズプレイヤーのように自由自在にアドリブを演奏できるのは憧れですよね。
ジャズ…とまではいかなくても、身近な例でいえば、ポップス等のソロパートでいつもと違うソロを入れる、これも立派なアドリブですし、楽しいもんです。
ただ、このアドリブ…考え方や方法論も色々あって、語り始めると長文になってしまいそうです。
そこで今回は要素を絞ってスケール周りのお話に限定しますが、アドリブといっても適当に弾いてはもちろんカッコ悪いだけでなく、調性を外れまくった聴くに堪えないものになる可能性が高いわけです。
「カッコよく」はひとまず置いておいて、少なくとも聴ける程度にはしたい…その場合は曲のキーのスケール構成音を弾けばとりあえずフレーズとして成立します。
逆にいえば、そのキーのスケールをマスター出来ていれば、それっぽいアドリブを演奏出来るわけです!これって楽しくないですか。
アドリブを上達させるには実践あるのみ。
- まずは何かの音源に合わせて、2音~3音程度に限定して自由に弾いてみる。
- 左手でコードを弾を弾きながら、右手2~3音程度で弾いてみる。コード進行は最初シンプル、慣れたらトニック-サブドミナント-ドミナントを意識する
- 右手の音数を増やしてみる
- リズムや音の長さを工夫してみる
こんな感じでスケール音を基調に、徐々に発展させていくことで、アドリブというものに慣れてくると思います。
各キーのスケール音を把握しておくと、アドリブとして適当に弾いてもそれっぽく対応できる。
スケール練習に効果的な本
スケール練習に役立つ本として、何だかんだいってハノン教本は外せないですね。
この本には、10本の指を使った練習パターンが数多く掲載されており、昔からスタンダートとされている練習本です。
まとめ
スケール練習は何のために行うのか…というそもそもの部分を今回はまとめてみました。
今回あげさせていただいた目的や効果の他にもスケール練習の目的はあるものと思いますし、この辺りは人によって分かれる部分でしょう。
ただ、どういう目的でスケールをマスターするとしても、その目的を意識した練習を行うことで、その練習効果が発揮されるという部分は変わりません。
せっかく時間をかけて行う練習ですから、無駄のない、真に身に付く練習にしていきたいですね!
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