世の中には様々な音楽ジャンルがありますよね。ロック、ポップス、ラテン、ブルース、EDM、演歌…などなど。
それらのジャンルの中でも特にピアノが活躍するジャンルでは、〇〇ピアノといった感じでピアノをジャンル分けするものがあります。例えば次のような名称です。
- クラシックピアノ
- ジャズピアノ
- ブルースピアノ
- ポップスピアノ(ポピュラーピアノ)
- ホンキートンクピアノ(これはジャンルではないか…)
今回はこの中で、ピアノの二大巨頭とでもいうべき、クラシックピアノとジャズピアノについて、その特徴の違いや魅力について解説していきます。
またテレビ番組「関ジャム完全燃SHOW」で今回のテーマを特集した回がありますので、そちらの内容も盛り込みながらお届けします!
クラシック、ジャズ、ポップスのピアノ演奏の違いとは? 清塚信也、山中千尋、紺野紗衣のコラボで検証 『関ジャム』 https://t.co/YoR3YbXnGY #関ジャニ #清塚信也 #山中千尋 pic.twitter.com/EIFCLQwM2B
— music.jp (@musicjp_mti) 2018年10月27日
クラシックピアノ・ジャズピアノの歴史
まずはそれぞれの歴史的な経緯を簡単に振り返りましょう。
クラシックの歴史
クラシック音楽は中世(5~14世紀)ヨーロッパの協会音楽がその源流ですが、この時代は楽器の伴奏などなく声による歌のみでした(グレゴリオ聖歌が有名です)。
そして次のルネサンス期(15~16世紀)では楽器の伴奏が登場しますが、この時代に使用されていた楽器はピアノではなくチェンバロ(ハープシコード)、そしてオルガンです。
チェンバロはピアノと形がとてもよく似た楽器ですが音を出す仕組みはまったく異なり、基本音は持続せず、音量のダイナミズムも少ないです。
クラシックにおけるピアノの登場は以下の時代区分に分けられます。
- バロック(17世紀~18世紀)
・ピアノやヴァイオリンによる伴奏の発達
・音楽家は宮廷に雇われた立場
・この時代はとにかくバッハ - 古典派(18世紀~19世紀)
・宮廷だけでなく市民に対するコンサートも開かれる
・音楽理論の体系を確立
・主な音楽家はモーツァルト、ベートーベン、シューベルトなど - ロマン派(19世紀~20世紀)
・より自己表現としての音楽が発達。いわゆるアーティスト
・主な音楽家はショパン、シューマン、ブラームスなど - 近代、現代と続く…
上記のような時代の変換点を迎えながら、演奏の形態が変化してきて現代につながっています。
ジャズの歴史
ジャズは1900年代初頭、アメリカのニューオリンズがその発祥といわれています。
クラシックに比べるとだいぶ歴史が浅いのです。
なぜニューオリンズかといえば、この地は元々ヨーロッパ各国の植民地争いの場所であった経緯から様々な人種が交わり合う地でした。黒人特有の音楽(ラグタイムやブルース)と西洋音楽(クラシック)が融合する下地があったことで、必然的にジャズが生まれた…といえるのです。
初期のジャズはピアノというよりも管楽器がメインでした。
初期のジャズの第一人者はトランペットのルイ・アームストロング、同じくトランペットで即興演奏を発展させたマイルス・デイビスなど、錚々たるメンツがいます。
管楽器がいないピアノメインのジャズは更に歴史が浅いものですが、ビル・エバンスやオスカー・ピーターソンのトリオあたりからジャズにおけるピアノの魅力が増していった感じです。
そしてクラシック同様、ジャズも様々に形態を変えながら広がっていきました。
- ニューオリンズジャズ
現在のジャズにつながる基礎を構築 - スイングジャズ
管楽器が多く入ったビックバンドによるジャズ - モダンジャズ
即興演奏を大々的に取り入れたジャズ。いわゆる一般的に想起するジャズのイメージはこれ。ビバップ、モードジャズ、クールジャズなどが含まれる - フリージャズ
これまでのジャズの概念に従わない自由な演奏によるジャズ - フュージョン
ジャズと他ジャンル(ロック、ラテン、ポップ等)を融合させた音楽。基本的にはインスト音楽
演奏方法の違い
クラシックピアノとジャズピアノでは演奏方法にも大きな違いがあります。まずその違いを分かりやすくイメージできる動画がありますのでご紹介します。
とても素敵なピアノ演奏を聴かせてくれる「Goza’s Piano Channel」のござさんです。
さて、ざっくりイメージがつかめた?ところで、それぞれの特徴をみていきましょう。
クラシックピアノの特徴
(1)楽譜を再現する音楽「再現の芸術」
(2)(1)再現するためのあらゆるテクニックが求められる
(1)楽譜を再現するための音楽「再現の芸術」
前述の「クラシックの歴史」でまとめたように、クラシックには長い長い歴史があります。
クラシックはその長い歴史で蓄積された数々の楽曲を再現する音楽であるといえます。
ここで関ジャムに出演したピアニスト(清塚さん・山中さん・紺野さん)の言葉を借ります。
- クラシックの場合、演奏するための一挙一動が楽譜に全て書いてある。
- 楽譜から時代背景、人物像、メッセージを読み取る
- 楽譜から全て読み取る考古学的な面白さがある
- クラシックは『再現の芸術』である
- 再現するために数百曲を暗譜し間違えずに弾く…クラシックピアニストの精神力と集中力はすごい→(これを言われた清塚さんニンマリw)
クラシックを演奏することの何たるかが、これらの言葉に集約されていると思います。逆にいうと楽譜に書いてない音を弾いてはいけないということです。
③にある「考古学的な面白さ」という部分ですが、これを表しているのは②の部分です。
例えばベートーベンが活躍していた18世紀のドイツではどういう場所で音楽を発表していたか、観客はどういった人々か、楽器の性能はどうか、ベートーベンの性格はどうか、どういった思考をもっていたか…
こういった部分に思いを馳せたうえで楽譜に向き合い音を出す…プロのクラシックピアニストは「おそらくこの曲の解釈はこうだ」というものを各自が表現します。
録音技術の無かった時代の音楽ですから答え合わせは出来ませんが、それでもそういった答えを探求していく世界であるともいえます。
(2)を再現するためのあらゆるテクニックが求められる
前述したようにクラシックは既存の楽譜を完全再現する音楽ですが、クラシックピアノの楽譜見たことありますか?
例えばコレ↓
こちらは、19世紀に活躍し「ピアノの魔術師」とうたわれたリストの「ラ・カンパネラ」という曲の楽譜です。まぁすごいです。
16分音符でこの連続する跳躍。右手は終止スタッカート。左手はト音記号とヘ音記号が頻繁に入れ替わる…譜読みの段階で頭が割れそうです。
この曲は難曲中の難曲といわれる曲であり例としては極端だったかもしれませんが、つまり譜面を再現するためには、譜面を正確にすばやく読み取る能力とそれを表現するテクニックが必要なのです。
そのためプロのクラシックピアニストになるためには、幼少期からピアノが生活の一部となるような凄まじい練習量が必要になります。
ジャズピアノの特徴
クラシックの完全再現に対してジャズは自由な音楽といわれます。その象徴は「アドリブ」(英語では「インプロビゼーション」)、つまり即興演奏です。
アドリブを含めジャズの特徴を決定ずけているのは次の3点です。
(1)アドリブ力
(2)アレンジ力
(3)独特なリズム
(1)アドリブ力
ジャズには様々な演奏形態があります。ソロピアノ、ビックバンドジャズ、ピアノトリオや、それにサックス等を加えたカルテット…。
形態は様々ですが、いずれのケースでも「テーマ」→「アドリブ」→「テーマ」という構成で演奏されるのが一般的です。
- テーマ
あらかじめ作りこまれたメロディ部分であり、その曲を印象付けるフレーズです。テーマは基本的にあまり変えずに弾きます。 - アドリブ
コード進行のみが決まっており、その中で自由に演奏するパートです。
ジャズはアドリブがメインであり、同じ曲でも毎回内容は異なります。つまり、ジャズでは演奏者自身の表現が全面に出る音楽です。この部分が作曲家(バッハやモーツァルト、ショパンなど)の考えを解釈して表現するクラシックとは決定的に違うところです。
ではどうすればアドリブ演奏が出来るようになるのでしょうか。
最も強くいわれるのは、とにかく色々な曲を聴くということです。様々な曲を聴くことでそれらのフレーズ・構成が血肉となり、自分の引き出しとしてストックされるのです。
そして、それらの引き出しを形にするためにの、コード、スケールの理解や練習が必要になってくる…という感じです。
ここでyoutuberござさんの動画で面白いのをもう一つご紹介します。ジャズを弾いているときに、ピアニストは何か考えているか…を文字に起こしたものです。
(2)アレンジ力
アレンジ力を説明するにあたり、、まずジャズで使用する譜面を見てみましょう。
はい、クラシックとは違いコードだけのシンプルなものです。
(実際はテーマ部分だけ音符が書き込んであったりします。)
ジャズピアニストはこの譜面を見て演奏を行いますが、右手、左手それぞれどういう動きをするかまでは指定されていません。
そこは演奏者に委ねられているわけです。
例えばコードについて。例の譜面では3和音又は7thを含めた4和音で記載されていますが、これをそのまま弾くジャズピアニストはいません。
実際はこれらのコードにテンションを加えて弾きます。テンションとはルート音から数えて9度や11度、13度といった音を構成音に含むコードで、これをテンションコードとよびます。
テンションコードは一種の不協和音ですが、これを効果的に使うことでジャズ特有の緊張感が生まれます。つまりどこでどのようなテンションコードを使うか、代理コードに変更するかといった部分がアレンジ力として問われるわけです。
(3)独特なリズム
もう一つ、ジャズらしさの源泉は何といってもリズムです。ジャズでは跳ねたリズムと裏拍に特徴があります。
一般的には「スイングする」とか「スイングジャズ」と呼んだりしますが、このスイングをせず通常のノリ(ジャストといったりします)の状態でいくらテンションコード満載の伴奏をしてもそれはジャズには聴こえないはずです。たぶんオシャレなシティポップ風な音楽になるでしょう。
譜面で表すと、8分音符を3連符にし、その3連符の1拍目を伸ばすイメージです。
タカタ・タカタと数えるところを、タータ・タータといった感じで表します。ただ、通常譜面ではこういう表し方はしませんので、自分で譜面上から読み取る必要があります。
ジャズピアノに興味がある方におすすめの練習ツールはこちらの記事で紹介しています!
まとめ
クラシックピアノとジャズピアノの特徴を改めてまとめてみます。
- 使用する楽譜が違う
- ジャズはテンションコードを多用するなど使用するコードが違う
- ジャズ特有のスイングなどリズムの取り方が違う
- 完全再現と即興演奏という対照的な要素がある
あとクラシックピアノとジャズピアノの違いに関する質問と同じくらい、どっちが難しいか?という質問もよく見かけます。
これはなかなか難しい質問です。何故なら難しいとされるポイントのベクトルがまったく違うからです。
そこでこの回のまとめとしまして、こういう性格の人はこっちが向いているかも?という観点で整理してみます!
【クラシックピアノが向いていると思われる人】
- 演奏というものに注力したい
- 理論よりも実際の技術を身に着けることに興味がある
- 細部にもこだわりをもって取り組める
- 物事に集中力を持って継続できる
【ジャズピアノが向いていると思われる人】
- 自分自身の表現を曲の中に表していきたい
- 理論も理解したうえで演奏したい
- ノリというものを出していきたい
- 他のパートと一緒にアンサンブルしたい
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