バンドで曲をコピーする場合、基本的にはバンドスコアを基に曲をマスターすることが多いと思います。
でも何らかの理由でバンドスコアが用意できない場合はどうしますか?
【よくある理由】
- そもそも販売されていない(一般的なニーズが少ない)
- 過去には発売されていたが現在は絶版で中古本市場で高額になっている
- 人気曲のスコアはあってもアルバムの中の曲で収録されていないものがある
- 経済的にスコアを何曲分も揃えられない
こういった色んな理由の「無い」があります。でもせっかくやりたい曲があるのにあきらめるのは勿体ない話です。
こういうときこそ「耳コピ」の出番です!
今回は耳コピをあまりやったことのない人に向けて、耳コピの手順を解説します。
なお、解説するにあたり、キーボーディストの立場で書きますが、どのパートであっても考え方は同様です。
耳コピとは
「耳コピ」とはその名のとおり、耳を使って(聴いて)曲をコピーすることです。
「曲を聴くだけでコピーするなんて絶対音感でもないとムリ!」…と思う方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
確かに絶対音感の持ち主であれば耳コピは容易かもしれません、でもそれ以外の方でも、ある程度の音楽的知識と楽器を使うことで耳コピを行うことができます。
また、耳コピは慣れの要素も大きく、やればやるほどコツをつかんで、コピーするのも早くなります。
加えて、耳コピを行うことで、希望曲のコピーを行うことができるのはもちろん、同時に音感が鍛えられることになります。(個人的にはこちらの効果の方が大きいと思うくらいです。)
そういった意味からも、是非耳コピを推奨したいと思います!
耳コピするための5つの手順
耳コピを効率的に行うための、5つの手順は次のとおりです。
- 曲の構成を把握する
- キーを把握する
- コードをとる
- コード進行を把握する
- ソロをとる
では、一つずつ深堀していきます。
1 曲の構成を把握する
バンドで曲を丸ごとコピーする必要がある場合は、最初に曲全体の構成を把握しておくと後の作業が楽になります。
曲の構成は次のような作業で形にしていくといいでしょう。
- 曲のおおまかな流れを聴く
- イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、ソロなどの展開を分解し、それぞれ自分のパートがどのくらい出てくるか、音色は何を使っているか、フレーズは繰り返しか、異なるか等を把握する。
- ②を構成表にまとめてみる
構成表について
構成表といっても、大げさなものを作成する必要はなく、自分で曲の構成が把握できるものであればよいと思います。
ただ、きちんとまとめておくと、そのままバンドで共有できるのでバンド貢献度も高まります。
<構成表のサンプル>
【サンプルの解説】
- イントロ部分はこのように表記しておくと、イントロであることがすぐ分かります。一般的にはリハーサルマークと呼びます。
- 把握したコードを書きます。(コードの取り方は後記)
- 「A」「B」という表記もリハーサルマークです。AメロやBメロなどの範囲を示すもので、よく「次Bメロからやってみようか」なんていう使い方をします。
- リピートマークで、これに囲まれている部分は繰り返します。
ある程度自己流でもいいので、「曲の全体像やポイントを客観的に掴む」という意味で、構成表を作成する
2 キーを把握する
続いて曲のキーを把握します。キーが分かると、その曲で使っているコードやスケールの予測がつけやすくなります。
キーについては以前、過去記事でも詳細を説明しておりますのでご参照いただければと思います。
キーを把握する方法として以下の方法があります。
- メロディラインから割り出す
- 曲の頭や終わりのコードをとる
①メロディラインから割り出す
歌物の曲であればボーカルメロディ(インストであればメロディを担当している楽器)の音を探します。ピアノなどの鍵盤楽器を使えば、単音のメロディを探すのは割と簡単に出来ると思います。
このとき黒鍵が使われているかどうか、使われている場合はどの鍵盤かに注目します。なぜ黒鍵の数を把握するかというと、黒鍵は音符に「#」か「♭」がつき、その数が調号としてそのままキーを示すからです。
上の画像のように楽譜の冒頭に示された調号によりキーを把握できます。
実際の探し方ですが、例えばボーカルメロディを鍵盤で探った結果、だいたい以下のような鍵盤位置を使用していたとします。
上記の音の配列は「Aメジャースケール」といい、Aから始まるメジャースケールです。
よって、この曲はキーがAである可能性が高いといえます。
多くの曲ではスケール外の音も使われていることが多いですが、7~9割方一致していれば、そのキーとして認識していて構わないでしょう。
②曲の頭や終わりのコードをとる
多くの曲では曲の始まりや終わりに、その曲のキーとなるコードが割り当てられていることが多いです。
例えば、キーがAであればA、キーがCであればCといった具合です。
- キーを把握するためには、ボーカルメロディを楽器でなぞり、使われている黒鍵の数から使用スケール把握→キーの特定を行う。
- 曲の頭や終わりのコードがその曲のキーであることが多い
- ①、②を組み合わせて最終的に判断する
3 コードをとる
曲の演奏は8~9割がバッキングパート(伴奏)ですが、これを行うためにはコードを把握することが近道です。
コードを把握するうえで、大きな助けになるのが「その曲のキーが何であるか」ですが、キーについては前項「2 キーを把握する」で特定済みとします。
そのうえで、2つの視点からコード把握方法を説明します。
①ダイアトニックコードを把握する
キーが特定されていれば、そのキーのダイアトニックコードも把握できます。
ダイアトニックコードとは、そのキーのメージャースケール(又はマイナースケール)で構成される音のみを使用したコードです。
ダイアトニックコードに関しては、こちらの記事でも詳細を説明しています。
例えば、キーがAのダイアトニックコードは以下の7つ。実際に曲を流しながら、以下のコードを当てていき、しっくりくればそのコードである可能性が高いです。
A・Bm・C#m・D・E・F#m・G#m♭5
②コードの構成音を分析して把握する
1曲の中で登場するコードはダイアトニックコードが中心とはいえ、それ以外のコード(ノン・ダイアトニックコード)も使われます。
そこで、コードの構成音を分析して把握する方法も併せて覚えましょう。
次のポイントを基にコードを把握します。
- ベース音をとる
- 3度の音をとる
- 一番高い音をとる
(1)ベース音をとる
ベースが弾いている音はルート音であることが多い。ルートはキーの根音ですのでその音を鍵盤で探してみましょう。
(2)3度の音をとる
コードをとる際、メジャーコードかマイナーコードか判断が微妙な場合はルートから3度の音がナチュラルかフラットしているか調べます。例えばベース音がCの場合、その時のコードにEとE♭のどちらが含まれているか聴き取ります。Eが含まれるなら「C]、E♭なら「Em」です。
(3)一番高い音をとる
テンションコードが使われている場合はなかなか判断が難しいですが、一番高い音をとってみましょう。例えば高い音がルート音に対して9度であれば、その間の音(3度、5度、7度など)を入れたコードで試してみます。
ルート音やコードの基本はこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
- その曲のダイアトニックコードが分かれば、その曲で使われている8割方のコードは特定できる。
- コードの構成音から導き出す場合はまずベース音に注目する。
4 コード進行を把握する
「3 コードをとる」ではあくまでも単体のコードの取り方についての説明ですが、一方でコード進行の法則から曲構成を把握するアプローチがあります。
コード進行には一定の法則みたいなものがありますので、その法則性から使われているコードを判断するというものです。
実はコード進行を把握する方法にスマホアプリを利用する方法があります。
こちらもご参考にしてください。
さてここでは、実際の曲で頻繁に使用されている定番のコード進行実例を紹介します。
- 循環コード
- カノン進行
- 王道進行
- 小室進行
①循環コード
循環コードとはいくつかのコードを経由して元のコードに戻るコード進行です。コード進行のパターンはいくつもありますが、「1.6.2.5」という進行が一般的です。
Ⅰ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅴ
キーがCの場合の1・6・2・5進行
C → Am7 → Dm7 → G7
Cのダイアトニックコードでルートから数えて、6番目、2番目、5番目のコードを並べたものです。
それぞれのコードにはサブドミナント、ドミナントという機能があり、このコードが来れば次はこのコードに進みたくなる…という性質を持っているコード進行です。
②カノン進行
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ
キーがCの場合のカノン進行
C →G→Am→Em→F→C→F→G
ヨハン・パッヘルベル作曲の「カノン」という曲のコード進行です。
このままの進行で様々な曲で使用されています。
③王道進行
IVM7→V7→Ⅲm7→VIm
キーがCの場合のカノン進行
FM7→G7→Em7→Am
多くのJPOPで使用されることから、王道進行と呼ばれています。
④小室進行
Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ
キーがCの場合のカノン進行
Am→F→G→C
小室哲也さんの曲で多用されたことで名付けられたコード進行です。
後半は進行はSD→D→Tという元々進行性が強い流れになっていますね。
5 ソロをとる
最近のJPOPなどにはソロがない曲も多いですね。
でも、かっこいいキーボードソロやギターソロは聴く方もワクワクするし、演奏する方も腕の見せ所だったりして、個人的には好きなパートです。
ソロ、特にギターソロの場合は単音のメロディであることが多いので、基本的にはキーを把握する方法と同様に、よく音源を聴いて楽器で音を一つずつ拾っていきます。
基本的には上記の方法で地道に取り組む必要がありますが、ポイントをいくつかピックアップします。
- イヤホンなどで音源の細部までよく聴く
- その曲のキーの基調となるスケール音に絞って音を探してみる
- 速弾きはスピードを落として聴いてみる
- 演奏動画がある場合は指のポジションを目視する
- 最後は割り切る
①イヤホンなどで音源の細部までよく聴く
耳コピ全体に言えることですが、まずは音源をよく聴くことが基本です。
その中でもソロは音が詰まっていることが多く、ハードロックでのギターソロなどでは、速弾きもよくあります。
そういったところから、実際の音がどうなっているかイヤホンで聴いて把握しましょう。
②その曲の基調となるスケール音に絞って探してみる
例えばAメジャーの曲であればAメジャースケールが基調のスケールとなります。
よってまずはAメジャースケールの音を中心に探してみる。その過程の中で音を一音ずらしたりしながら特定してしていきます。
③速弾きはスピードを落として聴いてみる
速弾きなどはよく聴いても音をとることが難しいです。そのような場合は音程を変えずにスピードを変えれるアプリがありますので、そういったものを活用してもいいと思います。
例えば「Songsterr」などがあります。
④演奏動画がある場合は指のポジションを目視する
youtubeには、数多くの演奏コピー動画があがっています。しかも演奏している指がよく見えるように撮影しているものも多いです。
こういったものも大いに活用させていただきましょう。
指のポジションが見えるので、すごく参考になります。
⑤最後割り切る
アーティスト自身のライブではソロを割と崩して弾いたりするものです。
それでも、カッコイイのはポイントとなる音とリズムを押さえているからだと思います。
つまりポイントさえ押さえていれば、それっぽく聴こえるということです。
ポイントとは以下のような点があげられます。
- 小節が切り替わる頭の音が一致している
- 伸ばしている音が一致している
- 印象深いメインフレーズは崩さない
ようは目立つ部分はオリジナルに寄せ、あとの細かいとこは多少自己流でも大丈夫!…ということです。
まとめ
耳コピを行う方法を5つの項目としてまとめてみました。
冒頭で触れたとおり、どちらかというと耳コピは譜面がないときなどに、必要に迫られて行うことが多いと思います。
しかし、楽器上達のための大きな要素である「音感」…これを鍛えるうえでも非常に有効なのがこの耳コピです!
そういった観点からも是非耳コピにチャレンジしてみてください。
最初はうまくいかなくても、1フレーズ、1コーラス…という感じで徐々にコピー範囲を広げて取り組んでみると案外できると思います。
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