こういった疑問にお答えします。
現代のシンセサイザーのプリセット音(最初から設定されている音色)はその質・量ともなかり充実しており、そのまま使っても十分すぎるほど満足できるレベルにあります。
ただ、バンドでキーボードを担当していると自分の好みの音色というものが生まれてきますし、コピーバンドであればオリジナルの音色に近づけたくなりますよね。
そこで音色のエディットをしていくわけですが、今回は比較的手軽でありながら、その効果が大きい内蔵エフェクターを活用した方法について解説していきます。
目次
シンセサイザーの主な内臓エフェクター
「エフェクター」と聞けばギタリストやベーシストの足元に並んでいる装置を思い浮かべる方もいると思います。
が、シンセサイザーの場合は最初から本体に内蔵されています。そう、お金を使って買いそろえる必要がないのです!この辺りはデジタル楽器の特権ですね。
次に「どういったエフェクターが内蔵されているか」についてですが、これはシンセのグレードによって異なりますが、一般的にはフラッグシップモデルといわれる上位機種ほどエフェクターや調整できるパラメーターが多い傾向にあります。
では具体的にどういったエフェクターが内蔵されているのか、主なものをピックアップします。
- コンプレッサー
- イコライザー
- リバーブ
- ディレイ
- コーラス
- フランジャー
- フェイザー
- ピッチシフター
- ヴィブラート
- オーバードライブ
それでは各エフェクターの効果と、主なパラメーターを(具体例としてKORG KRONOSの設定画面と共に)解説します。
①コンプレッサー
コンプレッサーは音量のバランスを整えてくれるエフェクターです。”バランスを整える”だとちょっと分かりにくいですが、弾いた音が小さい場合は大きく、大きい場合は抑える…といった感じである一定の基準に合わせて自動的に調整するという感じです。
音作りという観点では変化が見えづらく地味ですが、音に安定感を持たせるのに役に立つエフェクターです。そしてとても奥深いエフェクターでもあります。
コンプレッサーは”ダイナミズム系エフェクター”を代表するものですが、他にも「リミッター」「エキサイター」などがあります。
- RATIO…どのくらい圧縮するかを設定
- GAIN…音を圧縮したうえで全体の音量レベルをあげます
- ATTACK…入力音の音量レベルを設定
- RELEASE…音の終わりの長さを設定
②イコライザー
音には「周波数」というものがあります。要するに振動ですが、イコライザーは特定の周波数を強調したり抑えたり、ということができます。
周波数はおおまかに「低域」「中低域」「中高域」「高域」に分けられることが多いです。イコライザーの種類によってはもっと細かく設定できるものもあります。
上図はKORG KRONOSの「7バンド・グラフィック・イコライザー」の設定画面ですが、周波数帯を7つに分けてそれぞれ設定でき、どこが強調されているか視覚的にも分かりやすいものになっています。
例えば中域を強調すればふくよかな音になりますし、高域と低域を強調すると、シャカシャカしたいわゆる「ドンシャリ系」という音になります。
比較的効果がはっきりできるエフェクターですので、色々試してみると自分の思った音に近づけやすいでしょう。
- LOW
- LOW-MID
- HIGH-MID
- HIGH
それぞれが音域体を表し、数値を上げると強調、下げると逆の効果になります。
③リバーブ
大きなコンサートホールなどでは音が残響して聴こえると思います。身近なところではお風呂もそうですね。リバーブはその残響感を再現するエフェクターで、”空間系エフェクター”の1つです。
単純に音が広がるのでリッチな響きになりますね。自分の場合は音色をエディットする際結構たっぷりめに加えてます。
- TIME…残響の長さを調整
- MIX…残響と原音の音量バランスを調整
④ディレイ
こちらも”空間系エフェクター”の代表選手。
リバーブはフワーっと広がる残響音でしたが、ディレイはやまびこのように音が遅延して連続して聴こえます。
ギターソロなんかに使うと伸びやかで気持ちのよい音になりますが、シンセでもシンセリードなどに使うとカッコイイ音になります。
- DELAY TIME…原音に対してディレイ音をどれくらい遅れて鳴らすかを設定
- FEEDBACK…ディレイ音をどれくらい繰り返すかを設定
⑤コーラス
コーラスは”モジュレーション系”といわれるエフェクターの1つで、これもかなり使用頻度が高いです。
コーラスは原音に複数の音が鳴っているような厚みを加えることができます。
合唱は上手い人達が同じピッチで歌っても多少ずれが生じるものですが、この微妙なずれ(ゆらぎ)が合唱の妙になっています。コーラスはこのゆらぎをデジタル的に再現するものです。
例えばストリングなどの音色に使うと、広がりのある重厚な雰囲気を出すことができます。
原理はディレイと似ており、ディレイ音の遅延時間をほぼ無くして複数の音を重ねているような感じです。
- RATE…LFOの周期(うねりの速さ)を設定
- DEPTH…うねりの深さを設定
⑥フランジャー
フランジャーは音をウネウネさせることができる、ちょっとトリッキーなエフェクターです。
仕組みはコーラスとまったく同じで、原音に対してうねりのある音を加えたものです。その効果はエグさがあり、うねりのスピードや深さを調節することで効果音的な使い方もできます。
- RATE…LFOの周期(うねりの速さ)を設定
- DEPTH…うねりの深さを設定
- FEEDBACK…音のクセを強くする(よりインパクトを増す)
⑦フェイザー
フェイザーはフランジャーのクセをマイルドにした感じのエフェクター、という捉え方でいいと思います。
なのでパラメーターの種類もほぼ同じです。
ウネウネさせる系ではありますが、マイルドな分、さりげないゆらぎ効果を音に加えられます。
⑧ピッチシフター
ピッチシフターは、音程を自由に変えた音を加えることができるエフェクターです。
工夫次第で様々な使い方ができるエフェクターですが、分かりやすいところでは、ソロなどにおける一人ハモリ!
音程(ピッチ)を+3度などにしておけば、フレーズが3度ハモリになります。
これもバンド全体の雰囲気をリッチにしてくれます。
- PITCH…音程を設定
- LEVEL…原音とエフェクト音のバランスを調整
- KEY…キーのスケールにそって音程を調整(インテリジェンスピッチシフターなど一部のエフェクター限定)
⑨ヴィブラート
ヴィブラートは音量を周期的に上下させるエフェクターで、別名トレモロとも呼ばれます。
歌のテクニックにもヴィブラートがありますが、あれと同じですね。鍵盤の場合はエレピに使うと独特の雰囲気を出すことができます。
- RATE…ゆらぎのスピードを調整
- DEPTH…ゆらぎの量を調整
⑩オーバードライブ
音を歪ませるエフェクター。エレキギターには必須のエフェクターですが、シンセで使うこともあります。
シンセで使う場面としてよくあるのはオルガンです。特にジョン・ロードが出していた往年の歪んだハモンドオルガンは、今でも密かに?人気があります。
- DRIVE(またはGAIN)…歪みの強さを調整
音色別のおすすめエフェクター
主なエフェクターの基礎知識が分かったところで、ここからは音色別によく使用されるエフェクターを解説します。
ピアノ
- コンプレッサー
- イコライザー
- リバーブ
特にバンドでピアノ音色を使う場合はギターなどに埋もれてしまうことがあります。これは音色だけでなく音質の問題もあります。プリセットのピアノ音色はちょっとこもった感じのものが多いです。ちょっと輪郭がぼやける感じです。
そこでまずはコンプレッサーを使って音色全体を元気で張りのある音にしましょう。コンプを掛けるとパワフルになるだけでなく音の粒も揃うため、特にコードワークでゴリゴリのバッキングを弾く場合にお勧めです。
そしてイコライザーで高音を上げるか、中低域を下げて音質を調整しましょう。こうすることで音の輪郭がはっきりし、バンドの中でも抜けてきます。ただし、やり過ぎるとピアノ本来の音色から離れてしまうので、少しずつ値を増減してみましょう。
仕上げにリバーブで余韻を調整してあげると、リッチな雰囲気が増します。
オルガン
- ロータリーシミュレーター
- オーバー・ドライブ
- リバーブ
電子オルガンの代表的機種であるハモンドオルガンは、基本的に9本のドローバーとコーラスやビブラート、パーカッションといった機能を使って音作りをします。
オルガンの音作りはこちらの記事で詳しく解説しています。
オルガンにはジャズ系などに使われるポップ・オルガンや60年代から使われているコンボ・オルガンなどありますが、やはり一番はロック系で使われるハモンド・オルガンでしょう。シンセのプリセット音もこのハモンドを模したものが多いです。
まずロータリ・シミュレーター。先ほどご紹介した10コの中には入っていませんが、オルガンには必須のエフェクターです。(プリセットで最初から設定されているものもあります。)
これは「ロータリー・スピーカー」という音のうねりに緩急をつけるスピーカーの効果を模したもので、手元で「ファスト」「スロー」というスピードを切り替えることで音に立体感が出すことができます。
この緩急をうまく操作することで。ただの白玉コードでも十分聴かせられるようになります。
そしてこのロータリーに相性がよいのがオーバー・ドライブ。
ギターを歪ませるのと同じ要領ですが、オルガンは薄すめにかけるのがポイント。ロックバンドの音に馴染みやすく勢いが増します。
シンセ・パット
- リバーブ
- コーラス
- フェイザー
キーボーディストにとって重要な役目の1つに「空間を埋める」というものがあります。その役目を担う音色がシンセ・パットです。パッド系音色と呼んだりします。
パット系にもいろいろあって、ストリングス寄りのものから、宇宙的なクセのあるものまで幅広いですが、いずれにしてもその音色自体はそれほど主張せず、全体を引き立てる役目に徹します。
よく使われるエフェクターは空間系やモジュレーション系が中心になります。基本的にはリバーブで広がりを、コーラスで深みを調整しましょう。
そしてフェイザーでうねりを加えるのがポイント。もちろん曲想に合っていることが前提ですが、浮遊感が増すのでちょうどよい存在感を出すことができます。ただし先ほども触れたようにあくまで主役ではないので、ゆらぎの強さ(RATE)は控えめに。
ストリングス
- リバーブ
- コーラス
- オーバー・ドライブ
- ピッチシフター
- イコライザー
オーケストラの弦楽器といえばバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスですが、ストリングスはこれらを合体させたものです。お手軽にストリングスアレンジを使うことができるので使う機会も多い音色です。
他の音色にもいえることですが、同じ音色でも使う場面によってかけるエフェクターも変わってきます。全体を包み込む場合はリバーブをかけたいところですが、ストリングスでフレーズを聴かせたい場合は、輪郭を浮き上がらせる意味でリバーブは使わないこともあります。
むしろ薄くオーバードライブをかけると生っぽい感じが出来るので割とおススメです。その他にはピッチシフターでハモらせると、より多人数のオーケストラ感でます。
まとめ
シンセの音作りの中でも、比較的簡単で効果が高い、エフェクターの活用について解説しました。
この記事では各エフェクターの基本となるパラメーター(効果の効き具合を変える値)についても説明してきましたが、コツはとにかく色々触ってみることです。
そうすれば違いはすぐに分かります。音作りのコツはそれを繰り返していくことが近道ですね。
中には想像以上の音になったりするのが音作りの面白いところですので、楽しんでみてください。
Amazonが提供する”Amazon Music Unlimited”は、
6500万曲が聴ける音楽サブスクリプションの中でもトップクラス!
今なら30日無料で聴き放題です。是非この機会に!