ピアノという楽器はどういう形をしていますか?という質問をした場合、100人中100人が「鍵盤の備え付けられた黒光りした大きな楽器」といった回答をすると思います。
それだけ「ピアノ」という楽器のイメージは固定化されていると思います。
ただし、今私たちがイメージする現在のピアノの形になるまでに、実は様々なピアノが存在していたことはご存知でしょうか?
今回はちょっと変わり種のピアノをまとめて大紹介いたします!
ピアノのバリエーション
スクエア・ピアノ
正確な発祥は不明ですが、17世紀のイギリスで制作されたテーブル型のピアノがスクエア・ピアノです。このピアノは求めやすい価格とサイズで当時のイギリスで大ヒットしました。
四角いテーブル型は「クラヴィコード」とそっくりですが、音を出す仕組みはハンマーで弦を打つもので、まさにピアノです。(クラヴィコードは金属片が弦を叩いて音を出す)
鍵盤数は58鍵で、ダンパーペダルが1本だけ付いています。
J.S.バッハの末息子であるクリスティアンは、このスクエア・ピアノを用いて演奏会を開き、ピアノソナタを書くなど、スクエア・ピアノを広めるのに一役担ったといわれています。
このスクエアピアノは、日本に初めて持ち込まれたピアノとしても有名です。
ジラフ・ピアノ
この見た目…すごくインパクトありますね。この見た目はキリンが首を伸ばしている姿に似ていることから「ジラフ・ピアノ」と呼ばれています。
グランドピアノのように弦を横に張るのではなく、垂直に張ることで狭いスペースに置くことが可能になりました。この考え方はまさに現在のアップライトピアノですね。鍵盤数は85鍵です。
また上半分は「ハープ」にもそっくりです。これをみると、ピアノとハープはやっぱり親戚っぽいんだなぁと改めて思います。
キャビネット・ピアノ
内部の構造はジラフ・ピアノと同様に、弦が垂直に張られているものです。
ジラフ・ピアノと大きな違いは弦が囲われている点ですが、見た目はまるで格調高い家具のようです。鍵盤数は73鍵です。
この見た目からも「キャビネット・ピアノ」と呼ばれますが、見た目だけでなく、実際下の部分は棚になっており楽譜などが収納できるようになっています。
オルフィカ
1795年頃に、ドイツのレーリッヒが考案した小型のピアノです。
現在のショルダーキーボードと同じように肩から紐で吊るして演奏します。小型とはいえ、その内部は鍵盤で弦を叩く仕組みが組み込まれているわけですから、当時としてはかなり精工な技術でした。
オルフィカにもいくつかバリエーションがあり、一般的なものは36鍵ありましたが、更に小型のものもありました。
ちなにみ「オルフィカ」とは、ギリシャ神話の音楽神、「オルフェウス」の名に由来しています。
2段鍵盤ピアノ
パッと見、現在のハモンドオルガンのような見た目をしていますが、れっきとしたピアノです。
2段鍵盤ピアノにもいくつかおバリエーションがあるようで、上段がピアノ、下段がチェンバロになっているモデルも存在します。
もちろん、両鍵盤ともピアノの場合もあり、その場合は例えば上下の鍵盤にそれぞれ異なる音域をセットすることで、広い音域を容易に弾くことができてしまいます。
ただ、通常のピアノでも十分広い音域をカバーすることができるため、普及しなかったようです。
二重奏用ピアノ
ピアニスト二人が合奏する場合、よく見る光景は2台のグランドピアノを向かい合わせに置いて弾くものですが、このピアノは両端に鍵盤がセットされており、二人で同時に弾くことができます。
2台のピアノは細部でいえば音のキャラクターが異なったりしますが、このピアノでは響板とケースを共有しているため、完全に融和するハーモニーを奏でることができるのが魅力となっています。
ロール式自動演奏ピアノ
18世紀の中盤頃は盛んに自動演奏について研究され、試作機もずいぶん制作されたようです。
なかでもロール式自動演奏ピアノは、ピアニストの細かなタッチまで忠実に再現する楽器として知られています。
仕組みは、ロール紙に穴が開いてあり、その情報が読み取られ無人の鍵盤を押し下げることで音が鳴るものです。
鍵盤下の側面についているレバーで、テンポや音量などをTPOに合わせて手動で変化させることができます。
弓状鍵盤ピアノ
ピアノは音域が広い楽器ゆえ、座って弾く場合高音部と低音部の距離が遠くなり、腕を伸ばして弾かなければならないため、もっと楽に弾けるようにするため、どの音域も同距離にするように考えて作られたピアノです。
ただ実際は、端方向に跳躍して弾く場合など、鍵盤が視界から外れてしまうため弾きにくかったといわれており、普及しませんでした。
オルガン・ピアノ
この一台で、ピアノもオルガンも演奏できる、優れものです!
作曲家シューマンは「ピアノの音色にオルガン機能が加われば、ピアノは一層豊かな、和声も充実した楽器になるだろう…」と述べており、この楽器はその発言とまったく同じ発想から作られたものです。
ペダルの真ん中2本はピアノ用で、外側2つがオルガン用です。
オルガン用のペダルで足踏みオルガンと同様に風を送り込んで音を出す仕組みです。
クリスタル・ピアノ
この美しい、透明なピアノはXJAPANのYOSHIKIモデルとしても有名ですね。
本来木を作られている部分が透明なアクリル樹脂で出来ているため、重量も通常のピアノより100kgほど重く、移動や大屋根の開閉にも、すごく労力が必要です。
音も木製とは異なるようですが、このピアノの魅力はなんといってもその見た目ですから、逆にいうと、使う人もちょっと選びそうなピアノです。
まとめ
グランドピアノともアップライトピアノとも違う、ちょっと変わり種のピアノをご紹介しました。
それぞれの楽器ごとに、「ああしたい」「ここをこうすれば、狭いスペースでもいけるかも」「二つの種類の音だせんじゃね?」「自動的に演奏させられないか」等々、そのフォルムや機能を見るにつけ、製作者の思いが伝わってきます。
時代の流れの中で廃れていくものもありますが、それを作ってきた人もいるわけで、そんなところに思いを馳せてみるのもいいんじゃないかと思います。
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