音楽の雑学

【音楽著作権料の形が変わるか】著作権の現状(CISAC総会・私的複製補償制度の行方)

以前このブログで音楽著作権に関する基礎知識を網羅的に説明しました。

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音楽著作権に関する情報まとめ!(発生の仕組み・著作権協会等による管理・ユーチューブ等での使用・違反時の罰等)最近TPP発行の関係で、著作権法の一部改正があったことはご存知でしょうか。 また以前、音楽教室からも著作権料を徴収するとしてニュースに...

最近、著作権の私的複製…つまり個人で楽しむ範囲としての音源コピーに関するニュースが世間を騒がしています。


いったいこのニュース、何が問題で今後どのようになっていくのか、ニュースの中身を振り返りつつ、今後の展開を考えてみたいと思います。

 

最近のニュース 私的複製補償制度の見直し提言

今回のニュースは今後私たちの身近な問題になるかもしれません。順を追って説明します。

ニュースの概要

CISAC総会引用:CISAC

 

私的な録音、録画をする主たる機器がパソコンやスマートフォンに変わってきたことを受け、それらの売価にあらかじめ著作権料の上乗せを――。著作権団体の国際組織が31日、日本政府に向けたそんな決議をしたことを発表した。

引用:朝日新聞デジタル(2019/05/31)

2019年5月30日に日本で開催されたCISAC(著作権協会国際連合)の総会において、著作権に関するいくつかの議題が決議されました。

この中で特に「私的複製補償金制度に関する決議」が今回の話題の中心となっています。

 

CISAC(著作権協会国際連合)とは

CISACロゴ引用:CISAC

CISAC(シサック)とは、世界中の著作権管理団体が加盟する非営利の国際団体です(現在は現在111ヵ国と4地域の217団体が加盟。)

ただしこの組織自体が世界中の著作権を管理しているわけではなく、加盟国の著作権団体に関する活動や設立に向けた支援、そして著作権制度に関する広報活動や集中管理に関するシステム開発などの役割を担っています。

いずれにしても、加盟国の多さからも分かる通り、著作権管理に関する影響力を持っており、2年ごとに開催される総会では様々なことが議論・決定されています。

今回はその総会が35年ぶりに日本で開催され、冒頭の提言があったという流れです。

 

私的複製補償制度とは

カセットテープが主流だった昭和時代から、私的に楽しむ目的で音楽を録音することは著作権上認められていました。まぁカセットだと録音を繰り返すほどに劣化するし、それほど多くの影響はないからということでしょう。仮に取り締まろうとしても、現実的に無理ですしね。

その状況が変わったのが、デジタルで録音、録画できる機器の登場です。CD-RとかMDですね。「レンタル屋さんで借りたCDを劣化しない音質でどんどん複製されたら影響大きいぞ」となり、何らかの対策が必要となりました。

そこで考え出された対応が「私的複製保証金制度」です。

私的複製保証制度は、デジタル方式で録音された著作物に対して、著作の権利者が補償金を請求できるというものですが、これを個人対個人でやってしまうと、とてもじゃないですが事務が煩雑すぎるので、集中管理方式がというものが導入されています。

これは実際に私的録音している実態に基づいて補償金を徴収するのではなく、政令で指定されている機器・記録媒体の購入の際に一括して請求されるというものです。

ちなみに補償金を請求できる側も権利者本人ではなく、法律で定められています。音楽の場合は「私的録音補償金管理協会(SARAH、サーラ)」という団体がそれにあたります。

教会に集められた補償金はさらに各団体に分配され、そこから各著作権者(音楽でいうと作曲家や作詞家など)に分配されることになります。(詳しい分配の仕組みはこちらを参照)

まとめるとこういうことです。

今まで私的複製は認めてきたけど、デジタルで録音できるようになって無視できないね。ある程度お金取っていかないと権利者を守れない。

でも個別にお金集めていくのダルいね。

よし、録音できる機器や媒体に補償金として最初から盛り込んでおこう

で、補償金を受け取れるのはおたくの団体ね

了解!集めたお金は決まりつくって分配しよう

みんなwin-winや~

 

主な問題点

これらの制度が定められたのは主に90年代であることから、時代に合わなくなってきたという声が元々ありました。例えばMD。「ミニディスク」と聞いても今の10代、20代の人にとっては馴染みがないかもしれませんが、ミニディスクは1990年代初頭にソニーが発表した規格で、CDのようにデジタル方式で、カセットテープのように繰り返し削除や録音できるというもので、確かに使い勝手はいいものでした。

そこそこ普及し自分も結構使っていましたが、海外ではまったく普及せず2000年代の終盤にはソニー以外のメーカーも撤退、現在ではほぼ使われていない規格といえるでしょう。

逆に隆盛を極めているのが、ハードディスクを始めとした記憶装置内蔵型の機器であり、現在では更にSSDのような磁気媒体になっています。パソコンやスマホといった機器のことですね。

そういった私的録音補償金制度の範囲に「入っているもの」「入っていない」ものが現状に即していない…というのが協会を始めとする著作権者側の意見です。

 

今回のニュースのポイント

ここでやっと今回のニュースの中身ですが、基本的には上記の問題点を踏まえた提言となっています。要約すると…

MDとか対象になっているけど、もうほとんど使われてないし、補償金入ってこないんじゃない?今はパソコン上で音楽の録音することも多い…てかほとんどそうなんだから、その辺も対象に含めるよう法律改正しなきゃ意味なくね?そうした方がいいって日本政府にも行ってあげるよ!

…といったところです。

ところがさらに加えて、参加者からこのような発言がありました。

 

ヨーロッパでは送信可能化権でストリーミングサービスから著作権料を徴収しているということを受けて

録音か配信かが問題ではなく、ユーザーはデバイスで音楽を聴いている。私的複製の解釈の拡大や、いまの時代の音楽の使われ方に合わせた著作権料徴収への法律の改正が必要」
CISAC会長のジャン・ミシェル・ジャール氏

どこかで複製されていなければストリーミングもできない。新たな私的複製として捉えることも考えていかなければならない」と同調した。
JASRAC理事長 浅石道夫氏

 

つまり、「私的複製」の範囲をCDなどからパソコンに音楽を取り込むことだけでなく、ストリーミングサービスで音楽を聴くだけでも複製扱いということです。

ストリーミングサービスは、ほとんどの場合何らかのサービスに加入して聴いているわけですから、著作権料の二重徴収じゃないか、という声があふれる結果となっています。

また肝心のパソコン等に対して一律補償金を上乗せすることに対しても意見があります。パソコンはオーディオ専用機ではなく様々な用途に使用できる機器であるため、音楽の複製を行わない人もいるはず、というものです。

世間の声

さて、どんな声があるかいくつかピックアップしてみます。


やはりストリーミングを行っていることを名目に、デバイスに対して一律で著作権料を上乗せすることに対する拒否反応があるようです。

一方で海外ではパソコン等も補償の対象に含めているという意見もあります。

ただ、海外は様々な事情が異なるため一律で比較は出来ないですね。実際ドイツでは一時期にパソコンに対して補償金の支払命令がありましたが、最終的には最高裁で補償金の対象外であるとの判決がありました。

 

今回のニュースの受けて(個人的見解含む)

今回のCISACの「私的複製補償金制度」に関する決議は日本政府への提言という位置づけになるため、直ちに改正されるわけではありませんが、今後本腰を入れて検討されていくものと思われます。

とにかく著作権の問題に関しては、常に著作権者であるアーティスト側、利用者、教会等の管理団体、それぞれの意見が三者三様ある状況です。

こういった議論を混迷させているのは、違法行為が蔓延していることも要因の一つであると思います。(JASRACへの反発心もあると思いますけどね)

例えば最近も話題になっている違法アプリ「MUSIC FM」の件や、

著作権料を支払わずにBGM使用して訴えられていたりする件です。

こういった違法行為により、全体の法整備が引きずられていくことは残念だと思います。

重要なのは次の2点です。

  1. アーティスト等に著作権料がしっかり分配されること
  2. なるべく正しい利用実態に基づいて著作権料が徴収されること

①は当然ですね。ここが疎かになると、文化自体が衰退していくわけですから。

②は制度の仕組みと違法行為の取り締まりをしっかり分けて考えてもらいたいと思います。そのうえで、この複雑化した社会・技術の進展が難しい問題はありますが、そこの議論を深めていく必要があると思います。

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①を重視するためなら、しっかり運用してくれる前提で補償金制度の拡大もありだと思います。

まとめ

最近なにかと話題の音楽著作権について、ニュースを中心に説明いたしました。

色々と賛否ある話題ですが、これだけ技術革新のある分野ですから、法律だけが昔のまま、というのは無理があると思います。

いずれにしても、利用者へは議論のポイントを含めた丁寧な啓もう活動が大切ですね。