という疑問にお答えします。
ピアノを始めるからといって、すぐ自宅にアコースティックピアノを用意できる人は少ないでしょう。代わりに安価な”キーボード”を購入するケースが見受けられます。
今回はこの”キーボード”でピアノの練習をするにあたり、出来ることと出来ないことを解説していきたいと思います。
目次
キーボードの定義
そもそも一般的に”キーボード”とはどういう楽器を指すのでしょうか。実はキーボードという言葉は使う場面によって広義と狭義の意味があります。
キーボード(広義)

広義における”キーボード”とは、鍵盤楽器全般を指す言葉です。鍵盤楽器とはピアノ、シンセサイザー、エレクトリックピアノ(エレピ)、オルガン…といったものですね。
11種類の鍵盤楽器をこちらの記事で詳しく紹介しています。

広義の意味で使う場面としては、例えばバンドの「キーボーディスト」。バンド内でキーボードを弾く人という立場ですが、ここで弾くキーボードとは、シンセサイザーやオルガン、時には生のピアノを弾く場合もあります。
このように、鍵盤楽器全般を総称してキーボードと呼ぶ場合があります。
キーボード(狭義)

狭義における”キーボード”は特定の楽器を差す言葉で、一般的にはスピーカーが内蔵されている”ポータブルキーボード”を差すことが多いです。
今回の記事における”キーボード”とはこちらの文脈での意味となります。
メーカーによって機能の違いなど色々ありますが、一般的な特徴は次のとおりです。
- 価格が1~3万円程度で安い
- 鍵盤数はほぼ61鍵以下
- ピアノやオルガンなどの音色を出せるが、加工は出来ない
- ヒット曲等のリズムパターンが内蔵されている
- スピーカーが内蔵されている
- 非常に軽い
商品的にはYAMAHAのポータトーンやCASIOのカシオトーンなどが有名です。
ピアノ練習用としてのキーボード活用
上記でご紹介したとおり、キーボードはピアノの音も出るし、鍵盤自体も見た目はそっくり。なにより安いということで、ピアノを始める初心者が楽器を用意するハードルを下げてくれる、という側面があります。
しかし…
確かにピアノを弾く練習は出来るのですが、キーボードだけではピアノの練習として満たせない部分が多くあります。
キーボードを購入する場合は、その辺りを理解しておくことが重要です。
それではさっそく、キーボードがピアノ練習として使える部分、使えない部分を詳しく解説します。
キーボードがピアノ練習に向かない理由

キーボードがピアノの練習に向かないと思われる理由を3点ピックアップします。
- 鍵盤タッチが軽い
- 強弱が付けづらい
- 鍵盤数が足りない
1つずつ解説します。
①鍵盤タッチが軽い
最大の難点が鍵盤タッチの軽さです。
ピアノを触ったことがある方なら分かると思いますが、ピアノの鍵盤は割と重いです。これは音を出す仕組みがハンマーで弦を叩くという、物理的な重さが加わるためです。
対してキーボードの鍵盤は電気的なスイッチに過ぎません。重さは一切感じられないため軽いタッチで弾くことができます。
軽く弾けるため確かに楽ですが、負荷がかからないためピアノを弾くための筋肉が発達しないのです。例えば薬指や小指というのは他の指に比べて力が弱いですが、正しい指使いでピアノを練習することで手のひらにある筋肉が発達してきます。
筋肉が発達してくれば、強弱をつけた演奏にも安定感がでますし、長い曲も疲れずに弾き切ることが出来ます。
普段の練習をキーボードだけで完結させてしまうと、いざ生ピアノを前にしたときに、例え練習で弾けていた曲だとしてもうまく弾くことができないでしょう。これは挑戦する曲の難易度が上がれば上がるほど、その傾向が強くなります。
②強弱が付けづらい
ピアノ演奏における豊かな感情表現というのは奏でる音の強弱による部分が大きく、ピアノにとって非常に肝になる部分です。
対してキーボードは音の大きさについて強弱を付けづらい構造になっています。
①とも関連しますがこの部分も両者の構造が関係してきます。
- ピアノ
鍵盤を弾く(叩く)力の入れ具合がダイレクトに弦を伝わり、繊細な音からダイナミックな音まで出すことが可能 - キーボード
鍵盤は電気的なスイッチなので、どう弾こうと音自体は一定。機種によっては「タッチレスポンス機能」といって強弱をつけられるものもありますが、ピアノに比べると雲泥の差。
初心者がピアノを始めてこの強弱を意識するのは、比較的後になってきてからだと思いますが(その前段階でやるべきことがたくさんあるため)、最終的に人に聴かせる演奏を行う場合は非常に大事になってきます。
そうしたことを考えていくと、キーボードでは限界がありますし、物足りなくなってくるでしょう。
③鍵盤数が足りない
ピアノが88鍵あるのに対し、市販されているキーボードの多くは61鍵以下です。
キーボードのウリはその軽さやスピーカー内蔵からも見て取れるように可搬性です。つまりどこでも自由に楽器を弾くことができるのがメリットです。鍵盤数を抑えるのはそのメリットを生かすためですね。
その反面、ソロピアノ用にアレンジされた譜面は音域面で対応できない場合があります。
実際どのくらい対応できないか、という疑問に対し実際に調査した方がいます。今回はそちらの調査結果を引用させていただきます。
「キーボーディスト、脱初心者を目指す」さんの調査結果
過去数年分の雑誌(月刊ピアノ、キーボードマガジン)に掲載されていたピアノ譜面424曲の中で61鍵盤で弾ける割合を調査
結果:45.8%は61鍵で弾ける
逆にいうと半分以上のピアノ曲は、61鍵のキーボードでは弾くことができないということです。
将来的にどういったピアノを弾いていきたいか、という方向性にもよりますが、クラシックをはじめとするソロピアノを考えている場合、キーボードでは物足りなくなって来るでしょう。
キーボードでも可能なピアノ練習
前項ではキーボードがピアノ練習に向かない3つの理由を解説しましたが、じゃあキーボードでは全然ピアノの練習にならないかといえばそうではありません。
キーボードでも十分練習になる分野があります。こちらも3点で解説します。
- 鍵盤感覚を養う
- コードを覚える
- 楽譜を読む練習用
①鍵盤感覚を養う
鍵盤感覚とは「ある基準となる鍵盤に指を置いたら、あとは感覚で鍵盤の位置がわかる」というものです。
この鍵盤感覚があれば、常に鍵盤を目視する必要がないため初見演奏をしやすくなりますし、鍵盤のミスタッチを防ぐこともできます。
ピアノを習得するにあたり非常に大事な要素といえるでしょう。
ピアノとキーボードは鍵盤の重さや鍵盤数こそ違いはありますが、鍵盤の並び自体は同じなので、ピアノと同じような条件で練習を行うことができます。
②コードを覚える

同じ”ピアノを弾く”という行為でも、譜面を元にしたソロピアノ中心なのか、コードを覚えて弾き方り伴奏やバンドでバッキングを弾きたいのか方向性は色々あります。
特に後者を志向する場合にぜひマスターしていきたいのがコードです。
コードを覚えれば複雑な五線譜を見なくても、コード譜だけで伴奏が可能です。さらに循環コードと言われるコード進行を覚えてしまえば、コード譜すら不要でジャムセッションなども楽しむことができます。
このコードをマスターするためには、コードの構成音を理解することと、それを素早く押さえられるという両面が必要ですが、これらを練習するのに鍵盤の重さや鍵盤数は影響しませんので、キーボードでも対応することができます。
コードの基本はこちらの記事で解説しています。

③楽譜を読む練習用
ピアノにおいて楽譜を読む(譜読み)というのは、これまた必須スキルですね。(この辺をすっ飛ばして耳コピ特化しているツワモノもいますけどね!)
楽譜を読めるようにしたいといっても、ただ見ているだけではスキルは身に付きません。インプット(譜読み)したら、それを実際の音に変換(アウトプット)して確かめることで、譜読みが完成します。
このアウトプットするための鍵盤としてキーボードは使えます。しかもスピーカーが内蔵されているので、いつでもサッと取り出して出来るのが強みですね。
ピアノを突き詰めると表現力とは色々ありますが、とりあえずそれらは置いといて「楽譜を見て鍵盤を弾く」という基本的な動作はキーボードでも十分可能な訳です。
ケース別のおすすめ機材
キーボードがピアノの代わりとして活用できる部分、出来ない部分があるのは上記で解説したとおりです。これらを踏まえたうえで個人的な見解を述べます。
ピアノの代替えとしてはおすすめしない
確かにキーボードでもピアノのように弾くことはできますが、ピアノの代わりとして購入するのはおすすめしません。
理由はすぐに物足りなくなるからです。その要因は上で説明したとおりです。
これは実体験ですが、僕はバンドでギターからキーボードに転向した過去があります。その時訳も分からず最初に買った鍵盤がポータブルキーボードです。

確かに安くて手軽でしたが、ある程度上達してくると、音色や鍵盤、機能などで物足りなさが出てきました。
「ピアノの代わりにならないのは分かったけど、どうしてもお金が足りないから安いので最初はやりたい!」こう思う方もいるかもしれませんが、実体験上、すぐ買い替えた身としては結局高くつくと思うのです。
お金の問題はあるかもしれませんが、ちょっとお金を貯めて、次項でおすすめする楽器で練習してほしいなぁと思います。
ピアノ練習用としては電子ピアノ一択
ピアノを練習する環境としては生のピアノ(グランドピアノorアップライトピアノ)で練習出来ることが理想です。ただコスト面や住宅環境(主に置き場所や騒音問題)を考慮すると、自宅に用意する楽器としては電子ピアノ一択です。
なぜなら電子ピアノであれば「キーボードがピアノ練習に向かない3つ理由」を全て解消することが出来るからです。
電子ピアノの鍵盤はキーボード同様電気的なスイッチに過ぎませんが、少しでもアコースティックピアノの鍵盤に近づけるため各メーカーが特に力を入れています。
具体的には、アコースティックピアノと同様、鍵盤に木材を使用したり、鍵盤に重りを装着するなどしています。
これにより、ある程度指にずっしりくる弾き心地や、強弱による表現が可能です。また音量を調節(またはヘッドホンによりまったく音漏れがない状態も可能)が出来るので、夜間の練習など練習環境的にも自由度が増します。
おすすめ機種

置き場所やコスト面を考慮した場合に、もっともおすすめしたいのはCASIOのPX-S1000という機種です。
この機種は、ハンマーアクション付き鍵盤を搭載しているため、鍵盤の弾き心地がアコースティックピアノに近いにも関わらず、電子ピアノの世界では世界最小ボディを謳っているほどコンパクトなサイズとなっています。
バンド用としてはシンセサイザーがおすすめ
キーボードはピアノの代わりにはならなくても、バンドで使う分にはどうか?…これに関してもおすすめはしません。
理由は同じで、物足りなくなるからです。
確かにキーボードにも多種多様な音色が内蔵されていますが、バンドで実際に使うとなると2つの面で機能不足となります。
- 音色のエディット
- 音色の並び替え
この2つが出来ないのは痛いです。
コピーバンドなどを行うと、使われている音色に似せた感じで演奏したくなりますし、メンバーもそれを求めたりします。そうすると自分で音を作るという作業を行う必要がありますが、ほとんどのキーボードでは音色を自分で一から作ったり、既存の音をエディット(編集)する機能がありません。
音作りに関する記事はこちらも参考にしてみてください

また、ライブで希望の音色をすぐ呼び出せるように音を並べ替えて登録しておくことも必要ですが、キーボードではこれが出来ません。
これらが得意な鍵盤楽器は”シンセサイザー”です。バンドで入門機を買うならシンセサイザー一択だと思ってください。
おすすめの機種
シンセサイザーの入門機としておすすめなのは次の2機種です。
RolandのJUNO-61
KORGのKROSS-61
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