今回はアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の劇中歌として使用された「God Knows…」の、コード進行を中心とした楽曲分析を行います。
一見難しく聴こえるアレンジですが、実はそこそこの難易度に抑えられた、思わずバンドで演奏したくなるポップな1曲です。今回はその辺の秘密も解説していきます!
涼宮ハルヒの憂鬱とは
概要
『God Knows…』のバックボーンを知るため、まずはアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」について簡単に説明しましょう。
『涼宮ハルヒの憂鬱』はあの「京アニ」という名で親しまれているアニメ制作会社”京都アニメーション”による初の地上波作品であり、この作品によって同社が一気に有名になった、という経緯があります。
「God Knows…」は、作品の中で主人公たちが文化祭のステージでバンド演奏するシーンに使われたことで、軽音部などで演奏する曲として定番となりました。
アニメにおける楽器の演奏シーンって手の動きと音が合っていないことが多いですが、この動画ではギターの演奏シーンなどにリアルさを感じませんか?
それもそのはず、これらは実写映像を基にした手法(ロトスコープという方法)を使うことで、リアリティを追求しています。
「涼宮ハルヒの憂鬱」の視聴方法(U-NEXT)
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「God knows…」の楽曲分析
それでは、さっそくGod knowsの分析をしてみたいと思います。フルのコード進行はこちらのサイトをご覧ください。
キー
この曲のオリジナルキーはEメジャーですので、Eメジャーダイアトニックコードを中心に構成されています。
主に使用する音を鍵盤で示すと以下のとおりです。
イントロ
まずはギターのフレーズが印象的なイントロのコード進行をみていきましょう。
コード進行
イントロは「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm」の進行となっています。つまり「4536進行」ですね。これは別名「王道進行」と呼ばれ多くの名曲に使われています。
例えばこんな曲です。
- いとしのエリー(サザンオールスターズ)
- 瞳を閉じて(平井堅)
- ロビンソン(スピッツ)
- HANABI(ミスターチルドレン)
- SAKURA(いきものがかり)
- 全力少年(スキマスイッチ)
さて、ではなぜこのコード進行を使うとよい曲になるのか?その仕組みを探っていきます。
冒頭の「Ⅳ→Ⅴ」の流れはサブドミナントからドミナントと進行しています。この後トニック(Ⅰ)に進行すれば”ドミナントモーション”という安定感のある進行になりますが、王道進行では「Ⅲm→Ⅵm」と流れていきます。
ドミナントモーションの詳しい解説は下記の記事を参考にしてみてください。
しかし実は「Ⅲm→Ⅵm」自体がドミナントモーションなのです。
種明かしすると、ドミナントモーションといってもEメジャーキーにおけるそれではなく、Eメジャーと平行調の関係にあるC#マイナーにおけるドミナントモーションなのです。
つまり3、4小節目は平行調への一時的な転調をしているともいえます。こうすることでイントロの雰囲気は以下のようになります。
- 1,2小節 → Eメジャー(明るい)
- 3,4小節 → C#マイナー(もの哀しい)
つまり、王道進行は雰囲気の波を大きく転換しながらも、SD→D→Tの流れをくむことで、聴く人に安心感(というかしっくり感)を与えるという、絶妙なコード進行だったのです。
ギターフレーズ
イントロのリードギターにも触れておきましょう。
とっても印象的だしリードギターの見せ場ですよね。まず音数が多く速いうえに、音の跳躍も大きいためすっごくテクニカルで難しい印象を持つ方も多いと思います。
ただし、実際に弾くと実はそうでもないのです。
速弾きでもフルピッキングによるものは難易度高いですが、このフレーズは開放弦をうまく使っているので、左手のフィンガリング自体は複雑ではありません(弦を離したり押さえたりという動き)
そして、後半の6連符フレーズも、プリングというテクニック(左手で弦を弾く)を使っているのでやはり難易度は低めです。
ある程度練習すれば弾けるようになると思いますので、初心者でも恐れずにチャレンジすればおいしいフレーズがあなたのものになります。
詳しくは下記動画(kobekotamusic)で詳しく解説されています。
Aメロ
次、Aメロ行きましょう。
コード進行
「Ⅳm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」という進行になっていますが、この進行…実はあるコード進行にとっても似ています。その進行とはズバリ小室進行!
小室進行とは、小室哲哉氏が主に好んで使うところからその名が付きましたが、「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」というのがその中身です。
出だしのⅥmは平行調におけるⅠ(トニック)であることから、少しモノ哀しい雰囲気をたたえているのがこの進行のポイントです
つまりコード機能的には「T→SD→D→T」という流れになっているため、スッと入ってきやすいんです。
この曲のAメロでは間に「Ⅴ」が入っていますので、小室進行の派生バージョンといえるでしょう。
ただし、コードチェンジのタイミングが長い部分だと2小節間隔なので、それほど小室進行感を強く感じるというわけではなさそうです。
最後8小節目の「D#m7→G#7」は、平行調におけるツーファイブ進行(Ⅱ→Ⅴ)になっています。切なさを演出しつつAメロの綺麗に締めています。
リズム面
Aメロのドラムは基本的にバスドラムの4つ打ちが続きます。そして歌詞の譜割りも細かく、拍を強調したパートになっています。
これは後述するBメロとの対比において、曲をドラマティックに展開させる仕込みといえるでしょう。
Bメロ
次、Bメロいきましょう。
コード進行
コード機能的には「SD→T(代理)→SD(代理)→SD」という流れで進行していきます。代理コードをうまく使うことで、劇的な展開感は薄いですが、流れるように自然な進行が心地いいです。
7、8小節目はノンダイアトニックコードである「G#」を持ってくる(しかもsus4とのセット)ことで、次のサビへの劇的な展開へとつなぐバトンの役割を果たしています。
リズム面
Aメロの4つ打ちから一転、8ビートを刻みつつボーカルは伸びやかに歌い上げるパートになりました。このリズム面の切り替えが、曲展開にドラマティックさを与えています。
伸びやかに歌うBメロですが、5、6小節目になると16分音符を加えたメロディを繰り返し、サビへ流れていく展開もキレイです。
サビ
コード進行・メロディ
サビは基本的にイントロでも使用した”王道進行”による循環で構成されています。
そしてメロディはペンタトニックスケールの音のみを使ったものになっています。
リズム面
そしてリズム面では様々な工夫が施されています。
例えばサビ前半では1拍目の頭が常に半音前に食う形(アンティシペーション)になっています。冒頭ドラムのフィルインをバックにした弱起(アウフタクト)で始まる部分もそうですが、リズムに対してメロディが前のめりになる箇所は、疾走感を出す効果を高めてくれます。
サビの構成も、8分音符を中心とした箇所と、4分音符を中心にした箇所が繰り返し登場することで、メリハリが効いています。歌詞の内容によって、場面展開を図っていると考えると、しっくりきます。
このように、伝えるメッセージによってリズム面から展開を作っていくと、よりダイレクトに伝わるものになると思います。
まとめ
それでは”God knows”の分析まとめです。
- イントロとサビはヒット曲で頻繁に使用される”王道進行”に基づいた構成となっている
- アレンジで印象的なイントロのギターフレーズは、開放弦の利用とプリングの活用により実はそれほど難易度は高くない
- Aメロは小室進行(派生形)を取り入れることにより、切なさも醸し出している
- 平行調への転調を細かくいれることで、明るさと切なさを絶妙にミックスしている
- サビのメロディはペンタトニックスケールの音のみで構成されている
- ボーカルメロディは譜割りを細かくしたり、長くしたりすることで、曲の展開を生み出し、曲の世界観やメッセージを伝わりやすくしている。
上記のとおり、ヒット曲の法則をこれでもかと詰め込んでいました。God knowsを始めて聴いても、どこか懐かしかったり、しっくりくるのはそういう仕組みがあったからなんですね。
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