今年(2019年)の3月にニューアルバム「UC100V」を発売したユニコーン。今回のアルバムはなんとユニコーンの100周年を記念して”数字”をモチーフにしたアルバムとなっています。
「え!?バンドを結成して100周年??」ってなりますよね(苦笑)
実はこの100周年はカラクリがありまして、
- 2009年の再結成から10年
- ABEDONが加入して制作された「服部」発売から30年
- ドラム川西さんの還暦(60年)
上記を足しての100周年!!…ということなんです。
ネタを知るとなるほど~ですけど、インパクトはありますよね。
そこで区切りの良いこのタイミング、そしてユニコーンが大好きでリアルタイムで聴いてきたものとして、これまでの歴史をアルバム単位で振り返っていきたいと思います。
BOOM
背景とエピソード
1986年に広島で結成されたユニコーン。結成時のメンバーは次のとおり。
- 奥田民生(ボーカル)
- 手島いさむ(ギター)
- 川西幸一(ドラム)
- 堀内一史(ベース)
- 向井美音里(キーボード)
このときの関係性ですが、当時川西さんとテッシ―は同じバンドに加入していて、同じアパートで同居していた時期もあるようです。
当時は、朝からパープル(deep purple)の曲をガンガンにかけるテッシーに対して、川西さんはちょっと大変な目にあっていたそうで(苦笑)、テッシーはそのルックスからして、やはりハードロックがルーツなんですね。
で、同じ大学の後輩でもあったEBIを誘い加入、その後、広島で別のバンドをやっていた民生さんを勧誘して、今のユニコーンの原型ができたっていう流れです。
EBIを誘ったのもテッシーですが、当時EBIが加入していたアマチュアバンドはテッシーいわく「ベースでもっているようなバンド」だったらしく、それだけ目立ってたんでしょうね。今のEBIからは想像できませんが、ライブ中に観客と喧嘩して殺しかけたこともあったみたいです(アルバム「ハヴァナイスデー」のライナーノートより)。ああ見えてけんかっ早い?まぁ若いってのもありますよね。
ちなみにキーボードの向井美音里さんはこのアルバムのあと脱退しEBIと結婚しますが、後に離婚されています。
アルバムレビュー
メジャーデビューを果たしたファーストアルバムが、1987年にリリースされた「BOOM」です。
アルバムの収録曲は、今のユニコーンの音楽性と異なり、ストレートでポップな曲調が中心です。当時主流だったビートロックとよばれるものですね。
ただ、こういった曲の方向性を好むファンも多いですね(アルバムでいうと「BOOM」とセカンドアルバムの「PANIC ATTACK」です。)。
それはユニコーンにどういう部分を求めるかによると思いますね。初期ユニコーンはストレートでポップな曲調、そしてビジュアルにも可愛さ、カッコよさがありました。ようは「分かりやすさ」を求めるファンには好評なのだと思います。そして、このアルバムのほとんどの曲は作詞・作曲が奥田民生ですから、統一感のある仕上がりは必然です。
- Maybe Blue
何だかんだいってもこの曲は外せません。シンセで始まるイントロがとても印象深く、どこか憂いを帯びたメロディ。そして歌詞も男女の恋模様を歌ったもので、逆に新鮮に感じます。 - Alone Together
EBI作詞・作曲。それまであまり曲作りの経験がなくチャレンジしたようですが、やってみると「あれ、作れるのね」という感想を雑誌のインタビューで述べていました。とってもよい曲だと思います。曲間のピアノソロはスケールを下降しているだけのフレーズですが、しみじみ~と聴きこんでしまいます。 - Sadness
歯切れのよいクリーントーンによるギターカッティングのイントロ、そして憂いを帯びたサビへの展開。今聴いてもよい曲です。
気になった曲は30秒だけですが、視聴してみてください!
PANIC ATTACK
背景とエピソード
キーボードの向井美音里さんが脱退して、キーボードに加入したのがABEDONこと阿部義晴です。当時は「阿部B」というニックネームで呼ばれていましたが、これはスタッフの中にも阿部さん(阿部A)がいての「阿部B」ということです。
ここでメンバーはこのようになります。
- 奥田民生(ボーカル)
- 手島いさむ(ギター)
- 川西幸一(ドラム)
- 堀内一史(ベース)
- 阿部義晴(キーボード) ※現ABEDON
元々ABEDONは、音楽プロデューサーの笹路正徳さんの元でマニピュレーターを務めていて、当時ユニコーンのプロデュースをしていた笹路さんの流れから、バンドに加入した経緯があります。
実はこの頃からABEDONはなかなかの戦略家で、ミュージシャンとして世に出るのに、地味な下積みをしなくてもよい方法を日々考え、アルバイト等でプロミュージシャンのスタジオの現場に顔を出していたようです。
そこで目を付けたのは、当時世に出回り始めたコンピューターのレコーディング機材。「この扱いを覚えて、必要とされる人間になればいいんだ」。こう思ったABEDONは、思惑どおりに現場に呼ばれ、そこから笹路さんの元で働くようになったようです。
いやーこのABEDONの考え方、すごくいいと思います!
自分のスキルを高めて必要な人間になる…何にでも通じる考え方ですね。
実際ABEDONは、鍵盤はもちろん、ギター、ドラム、ベースとマルチミュージシャンでありつつ、音楽プロデューサーも務め、今ではユニコーンのリーダーであり、CDのマスタリングまで挑戦しています。こうも幅広いスキルがあるのは、この考え方が根底にあるからなんでしょうね。
アルバムレビュー
笹路さんのプロデュースで特に影響が強く出ているのが、キーボードアレンジだと思います。
このアルバムのアレンジ面は、ギターよりもシンセが全面に出ています。音色的にも当時の海外の影響を感じさせるものもあり、キーボーディストとしては今でも参考になります。
そしてアルバムジャケットですよ!EBI、そして川西さんのモヒカン!特に川西さんのはインパクト大!
それにしても、民生さんとEBIの二人がアップで掲載されているのは、当時のアイドルバンド路線、または商業的な狙いなど方向性がうかがい知れますね。
間違いなく名曲ぞろいのアルバムでありながら、過渡期であるのもうかがい知れる、そんな1枚だと思います。
- I’M A LOSER
1曲目の収録曲で、エアバンドをするPVも思い出深い曲です。勇気を出せず動けない自分への苛立をうたった、ある意味逆説的な応援ソングでもあると思います。 - FINALLY
男女の別れを細かな描写で描く…シリアスです。 - 抱けないあの娘 -Great Hip in Japan-
太ってしまった彼女に対して苦悩?する男の子の話ですね。歌詞が独特で面白い。「ペケペケ」もそうですが、ポップでシリアスな曲が多くを占める中、現在のユニコーンにつながる要素もチラホラ見受けられますね。
服部
背景とエピソード
前作「PANIC ATTACK」から徐々に変化の兆しはありましたが、この「服部」から明らかにバンドのスタイルが変わりました。
なぜこういう方向性になったかは色々理由付けできるのかもしれませんが、大きな理由の一つはやはりABEDONの加入があると思います。
広島出身の4人の中で、唯一山形出身という環境の中で、ABEDON自ら「自分が入ってこれまでと同じでは、入った意味がない」と雑誌のインタビューで語っていました。
おそらく意識的に新しいアイデアを提案していって、もともとノリのよいメンバーがそれに呼応して、どんどんアイデアを転がしていった結果が「服部」につながっていったものと思われます。
といいながら、アルバム収録曲で唯一のABEDON作の「逆光」がシリアスなバラードというのが、また面白いところです。
ちなみに、ファーストアルバムから続いた笹路さんのプロデュースはこの「服部」で終了しています。後年笹路さんのプロデュースを受けていた期間を振り返って、メンバーはこのように語っています。
奥田民生
「俺らの場合は、特に最初の頃は笹路さんとかいてね。監督のもと、監督の気持ちにむくいるには、みたいなことで。」ABEDON
「俺の場合プロデュースをなんでやっているかというと、笹路さんが師匠だったし、そこで教えられたものって、すごい多いわけよ。大げさにいえば、笹路さんがいたから今の自分があるっていうぐらい。もらったものは大きくて、だからそれを返さなくきゃっていうのがあってね。」引用:UNICORN GOLDIES but OLDIES 1987-1993
アルバムレビュー
まずは、何を置いてもこのジャケットのおじいさんですよね。
「PANIC ATTACK」もある意味インパクトがありましたが、「服部」のこのジャケットはインパクトの方向性がまったく違う!「ん?…んん?……って誰やねんww」って感じです。(中村福太郎さんというとび職のおじいさんです。)
そしてタイトルの「服部」…もはや意味なんて考えることは無意味かもしれませんが、一説には、山形の影の支配者「服部敬雄」のことを歌った曲といわれていますが、山形といえば…そうABEDONの出身地です。
つまり、ABEDONに対する一種の(愛のある)いじりですね。
このジャケットとタイトルだけでも、ふざけているのか、真面目なのか分かりませんが、現在に続くユニコーンの出発地点となったアルバムなのは間違いありません。
そして、曲の方もバラエティ感がすごい!!
それもそのはず、このアルバムでは全メンバーが曲を書いているのです。「このアルバムから」といった方が正確でしょうか。このスタイルは今現在に引き継がれています。
もっとも、この方向性がユニコーンの解散につながった一つの原因ではあるのですが…。
ユニコーンの解散理由
メンバー全員が作詞作曲を行う方向性は、次第にメンバーの意思表示の増大、つまり自己の意見を通したいという方向になり、リーダーシップをとれる人間がいないユニコーンにとっては、それが解散の一番の原因になったといわれています。
まず音楽ジャンルがすごいです。
オーケストレーションの「ハッタリ」、ハードロックの「服部」、ラテンの「君達は天使」、フォークソングの「ミルク」…
歌詞のバリエーションにも脱帽。
10歳の男の子(ペーター)に、「俺はジゴロ とてもジゴロ なびいた女は数知れず」と歌わせる「ジゴロ」。ボーイズラブ?を超えて、ある男性の一生を歌った「人生は上々だ」。
そして、正統派なポップロックソングともいえる「おかしな二人」に「大迷惑」…いや正統派というにはやはり歌詞が独特かも、でも間違いなく名曲。
そして、ABEDON作の「逆光」。こういったシリアスなバラードをポンっと間に入れるから油断できませんよ、ユニコーンは。
実は、これもABEDONの戦略で、最後にアルバムを俯瞰してみて、曲調のバランスをとるためにあの曲を作って収録したそうです。うーむ、どこまで計算されているんだろうか…恐るべし。でも大好きな曲。
ジャンル、歌詞、アレンジ…どの視点からみても、アイデアてんこ盛りで、一見まとまりがないようでいて、なぜか通して聴くとしっくりくる。これもバンドに確かな力量があってこそなせるものなのでしょう。
- おかしな二人
まだ解散する前に実施した好きな曲ファン投票でも1位に選ばれた曲です。サビがなかなか登場しない、そして1回しか登場しない…そんなジラしのテクニックを使った曲でもあります。 - 逆光
こういう曲を書かせたらやっぱりABEDONですよ。ユニコーンの曲ではめずらしいリリカルなピアノも聴きどころですし、音程が少しずれたストリングス、これは笹路さんのアレンジだと思いますが、曲の緊張感をさらに増してますね。 - 人生は上々だ
チープ感を出したドラム、ピアノ…演奏でこういう雰囲気を出すのも地味に難しいなぁと思ったり、最後の転調の連続!しかもそこをコーラスする!…それをギャグっぽく出来ちゃうのがユニコーンです
ケダモノの嵐
背景とエピソード
ユニコーンはこの頃「3か月連続アルバムリリース!」という企画をぶち上げました。
1990年のことです。
このときリアルタイムでアルバムで購入していましたが「なんていうこと考えるんだ」と驚いた印象があります。
シングル3か月連続…とかではなく、アルバムですからね。
で結果1990/10/1に「ケダモノの嵐」、11/1に「おどる亀ヤプシ」、12/1に「ハヴァナイスデー」とちょど3か月ごとにリリースされました。(後半2枚のアルバムはミニアルバムではありましたが、3枚ともコンセプトがまったく異なり、クオリティが高い!)
ちょうどこの頃当時深夜にやっていた「夢で逢えたら」のオープニングに「働く男」「スターな男」が採用されて、ダウンタウンやウッチャンナンチャンと共演してました。
ちなみに特に民生さんはダウンタウンとその後も縁があり、「ダウンタウンのごっつええ感じ」や、しまいには浜ちゃんのプロデュースまでやることになります。
めっちゃ懐かしい~~~。
そんな中発売された「ケダモノの嵐」は、服部路線をさらに大きく、そして深くしていったような、名作アルバムとして評価されることになります。
アルバムレビュー
このアルバムで初めて、オリコンチャートで1位を取り、日本レコード大賞ではベストアルバム賞を受賞しました。記録面からも名作認定されたわけですが、肝心なのは収録曲です。
アルバムを経るごとに、民生作の曲が減り、EBIやABEDONの曲が増えていく傾向にあります。それに加え、川西さんも作曲しているうえにボーカルも取っている。
民生さんの割合は減ってはいますが「エレジー」のようなインパクトの大きい曲をぶっこんでくるし(こんな曲はユニコーンでしか出来ないです!もちろんいい意味で!)
そして、テッシーは名曲「自転車泥棒」を作詞・作曲などよい仕事をしています。
本当にメンバー全員の才能が頂点に差し掛かりつつある、アルバムだと思います。
「命果てるまで」「エレジー」「スライムプリーズ」「いかんともしがたい男」など、超肩の力抜けまくっている感のある曲がある一方、「ケダモノの嵐」「CSA」「スターな男」のような気合の入ったカッコイイ系があったりと、あいかわらずの「統一感の無さ、でもそれがいい」を地でいく曲構成。
特にラスト2曲の破壊力は格別ですね!
- 自転車泥棒
定番かもしれませんがやはり外せません。ユニコーンにはあまりない、甘酸っぱい青春ソングともいえる曲ですね。ピアノのコードワークとコーラスがとても気持ちよい曲です。 - 富士
ABEDON作詞・作曲・歌唱の、まさに阿部義晴テイスト溢れるバラード。ほのぼのアレンジですが歌詞はいろんな解釈が出来るのだと思います。 - スターな男
ロックスターの生活を歌ったロックナンバー。これは理屈入らないですね。疾走感を楽しめる曲で特にドラムが気持ちいい。後半は各ソロパートもあって楽しい。
おどる亀ヤプシ
アルバムレビュー
3か月連続アルバムリリースの第2弾。6月曲入りのミニアルバムです。
このアルバムのオリジナル版は、ちょっと変わっていてなんと絵本になっています。
(後の再発では絵本ではなく「おどる亀ヤプシ+ハヴァナイスデー」がセットで通常のCDとしてなりました。)


傾向としては、外部のアレンジャーを多く招いて、通常のバンドアレンジ以外のことにチャレンジしているアルバムです。
なので色々バラエティに富んでいるんですが、ユニコーン以外の味付けもふんだんにあるので、いつにもましてカオス状態です。
- PTA~光のネットワーク~
アレンジにピチカートファイブの小西康陽を招いた、テクノっぽい曲。まぁタイトルにあるとおりTMネットワークをパロッた(サビは光るGENJIも)曲。でも、この曲大好きだったんです。近年のライブではやってくれるのでうれしいです。 - ボサノバ父さん
ボサノバ…というよりアフリカの民族音楽みたいなリズム、でもギターはボサノバっぽいですね。お父さんがもっている秘密ってなんだろう?…気になる。
民生さんが雑誌で語っていたのは「秘密って例えば、お前(娘)は子どものころお風呂で滑りそうになってお父ちゃんのちんちんつかんで助かったんだぞ」…みたいなことです(笑い)と語っていました。 - 12才
テッシー作の曲ですが、これは民生ボーカルでよかったですね。高らかとうたいあげるサビが気持ちいい。
ハヴァナイスデー
アルバムレビュー
3か月連続アルバムリリースの第三弾!
このアルバムは「ストレートなロックアルバム」をコンセプトに制作され、レコーディングはなんとニューヨークです。
実際アレンジはギター中心で、シンセ系はかなり少ないです。
ボーカルにやたらリバーブが掛かっているのも、今までとちょっと違いますね。
「おどる亀ヤプシ」からのこのふり幅よ!!
- ハヴァナイスデー
典型的なロックンロールナンバーで、これは民生さんも得意とするところです。
骨太な感じで、これはこれでいいですね! - 東京ブギウギ
昭和の時代を象徴する?曲のカバーです。ABEDONのピアノがフューチャーされる機会はあまりないので、そういった意味ではよいカバーだと思います。 - $2000ならOKよ
ABEDONのアカペラ!女性コーラスとボイスベースで、大人の歌を歌いあげます。
まとめ
ユニコーンの1枚目から6枚目までのアルバムについて、その背景やエピソードを交えつつ、振り返ってみました。
ふー、振り返ってみるとなんと8千文字も書いていました。長くてすみません(汗)
これまで何度も何度も聴いてきた曲たちですが、記事を書きながら改めて聴くと、初期から現在に変化していく過程がなんとなく分かって、そこも面白かったです。
同時にユニコーンの魅力ってなんだろう…っていう根本的なことも考えました。
普通に好きな曲多いしなぁ~と漠然と思いましたが、もっと根本的なところでは、きっとこの5人でないと成立しないバンドだからだろうな…という希少性に気づきました。
さて、今回は解散前・前編としてまとめました。
次回、解散前の後半としてお届けします。お楽しみに!!
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