コード進行

【コード進行分析】荒井由実(ユーミン) 「卒業写真」のコード進行を分析

あの名曲のコード進行はどうなっているのか?

その仕組みを知ることで曲作りや演奏に生かそう!というコンセプトで実際に分析してみたいと思います。

今回は荒井由実(現・松任谷由美)の名曲「卒業写真」です。

卒業シーズンでもなんでもありませんが、細かいことは気にせず行ってみましょう!

 

卒業写真の基本データベース

「卒業写真」は荒井由実時代のアルバム「COBALT HOUR」(1975年)に収録されている曲で、松任谷由美の代表曲の一つであるとともに、卒業ソングの代名詞のような曲でもあります。

実はこの曲は当初コーラスグループ「ハイ・ファイ・セット」への提供曲として作詞・作曲されましたが、後に荒井由実名義として本人が歌ったものがリリースされた経緯があります。

まずはハイ・ファイ・セットバージョンの卒業写真を聴いてみましょう。

すごくシンプルなアレンジのためか、メロディと歌詞の良さが際立ちますね。山本潤子さんの歌声も染み入ります。

そして荒井由実バージョンを聴いてみましょう。こちらはオリジナル音源ではなくカバーされたものですが、ほぼ原曲に近いアレンジになっています。

カフェラン
カフェラン
今から40年以上前の曲なのに古臭さが全然ありませんよね

そしてこの曲は多くの有名アーティストからカバーされた曲としても有名です。
例えばいきものかかり、コブクロ、今井美樹、槇原敬之など錚々たるメンツです。

やはり冒頭でも触れましたが、元の楽曲が非常にシンプルであるため、各アーティストが自分なりの工夫を入れる余地があるんでしょうね。

ちょっと切なく、ノスタルジーを感じるのは歌詞の内容もありますが、ハーモニー、つまりコード進行にもその秘密はありそうです。

それでは、さっそくコード進行を分析してみましょう。

 

卒業写真のコード進行分析

卒業写真

まず卒業写真のコード進行についてはこちらのサイトをご確認ください。

卒業写真(J-FRET)

 

ちなみにこの曲のキーはCですので、Cのダイアトニックコードを基本に進行していきます。

keyCのダイアトニックコードkeyCのダイアトニッ

 

イントロ

それではイントロからみていきましょう。イントロはこちらの4小節から構成されています。

卒業写真_コード進行_イントロ

まず①の部分です。この部分は(Ⅱm7→V7→ⅠM7)という進行になっていますが、Ⅱm7→V7の流れはコード進行の定番ともいえるツーファイブ進行です。(キーCにおける2度から5度への進行だから”ツーファイブ”ですね。)

そして、V7→ⅠM7の流れはドミナント・モーションと呼ばれ、非常に終止感が強く落ち着くコード進行とされています。

※ドミナントモーションについてはこちらも参考にしてみてください。

キャッチアイ画像
【ピアノコードの勉強シリーズ 第5回】ダイアトニックコード内の役割分担(トニック・サブドミナント・ドミナント)を理解しよう。コードの勉強シリーズ第5回目です。 前回はダイアトニックコードという仲良しコードの集まりがあるんですよ、ということについて解説いたしま...

 

そしてこれらの進行を組み合わせると、ツーファイブワン(Ⅱ→Ⅴ→Ⅰ)として超定番化しているコード進行となります。

カフェラン
カフェラン
卒業写真では、イントロの頭からこの定番のコード進行をそのまま使う事で、聴き手に安心感にようなものを与えていると思います

 

そして②の部分。ここでC7というノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード外のコード)が登場しました。

実はこのC7、このあとAメロ頭で登場するFM7とセットで、セカンダリードミナントを形成しているのです。

本来FM7はキーCの中では4度でサブドミナントとしての役割を担いますが、このFM7を仮のトニックと見立てればC7が5度のドミナントコードなります。

つまり、C7→FM7の流れはもう一つのドミナントモーションというわけです。

このようにダイアトニックコード内のコードを仮のトニックに見立て、本来のドミナントモーションと別のドミナントモーションを形成することを「セカンダリードミナント」といいます。

このようにノンダイアトニックコードを盛り込んでいくと調性感に広がりが感じられるため、曲に変化をつける際に有効です。

セカンダリードミナントについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

【ピアノコードの勉強シリーズ 第7回】セカンダリードミナントの活用方法について解説!コードの勉強シリーズ第7回目です。 今回はコード進行の定番的な手法の一つである「セカンダリードミナント」の使い方について解説したい...

 

それでは、以上を踏まえてコードの流れを聴いてみましょう。

 

Aメロ

次にAメロのコード進行をみていきましょう。

卒業写真 Aメロコード進行

ここでのポイントは①部分のD7です。

本来キーCにおける2度はDm(Dm7)ですから、D7はノンダイアトニックコードという位置づけになります。

イントロ編でもご説明したとおり、ノンダイアトニックコードを適当に使うと曲の流れに違和感を感じさせますが、うまく使うと調性感に広がりを持たせることができます。

Ⅱ7がダイアトニックコードの場合の活用は以下のとおりです。

Ⅱ7が使われるときのパターンで多いのは”Ⅵm7→Ⅱ7”の進行です。

逆に考えると、Ⅵm7を使った場合の進行パターンの選択肢としてはⅡm7に行ってもいいしⅡ7でもよいといえます。

Ⅱ7に進行した方が切なさ度が増す傾向にあるため、ここぞというときに使うと効果的です。

上記の進行に当てはめると、Am7→D7という流れが一つあり、その続きとしてツーファイブ進行としてG7がきます。

このAm7→D7→G7という進行はスピッツの「空も飛べるはず」でも使用されています。

【空も飛べるはず サビ】

F G  Em7  Am  D7         G
きっと今は自由  に空も飛べるはず

このようにⅥm7→Ⅱ7の進行は様々な曲で使用され、ある程度パターン化されています。

 

 

サビ

最後にサビのコード進行をみていきましょう。

卒業写真 サビコード進行

基本的にはほぼダイアトニックコードで構成されていますが、ここでは①部分に着目します。

①のコード進行はⅡm7→Ⅴ7→ⅠM7→Ⅵm7で通称「逆循環コード」と呼ばれるものです。

逆循環というくらいですから、当然循環コードもあります。

【循環コード】
広義では4つのコードで延々と繰り返せる(循環できる)コード進行を指しますが、一般的には「Ⅰ→Ⅵm→Ⅱm→Ⅴ7」のコード進行を指し通称「1625(イチロクニーゴー)」と呼びます。

【逆循環コード】
循環コードを逆にしたもので進行は「Ⅱm→V7→Ⅰ→Ⅵm」となり、通称「2516(ニーゴーイチロク)」と呼びます。

上記をみて気づかれた方がいらっしゃるかもしれませんが、Ⅱm→Ⅴ7→Ⅰって結局はイントロで登場したツーファイブワンを内包している進行なんです。

つまり、ツーファイブワンの進行は、延々と循環するのにも適している、とても安心できる進行なんです。

 

まとめ

卒業写真におけるコード進行のポイントをまとめます。

  • イントロはツーファイブワン(Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ)の進行をそのまま使用したものであり、聴き手に対する安心感を醸し出している。
  • ノンダイアトニックコードのⅠ7は、FM7に対するセカンダリードミナントとして使用されており、曲の変化を与えている
  • ノンダイアトニックコードのⅡ7は、Ⅵm7→Ⅱ7をセットで使用すると、違和感なく進行させることができる。
  • サビのコード進行の一部はイントロと同じであるが、このコード進行は逆循環コード(2516進行)と呼ばれ、安定感の進行といわれている。

卒業写真には定番とされるコード進行が多く組み込まれていることから、聴き手に対する安心感とともに、調性外のコードを効果的に使用することで、飽きさせない作りになっています。

実際にユーミンがどこまで計算して作ったか分かりませんが、かなり計算して作られていると感じました。

お手本コード進行として、曲作り等の参考になると思います。