コード分析シリーズの第2回目として、今回は日本が誇るアニメ主題歌の名曲「残酷な天使テーゼ」を分析していきたいと思います。
この曲が発表された1990年代は、小室哲也プロデュースの楽曲が一世を風靡していたこともあり、小室サウンドの影響が随所に見られます。今回はコード進行だけでなく全体的な楽曲分析としてもお届けします。
残酷な天使のテーゼ 基本データベース
”残酷な天使のテーゼ”はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマとして使用された曲です。
新世紀エヴァンゲリオン
エヴァンゲリオンは1990年代を代表するアニメの一つで社会現象にもなりましたから、アニメを直接観たことは無くても、名前だけは聞いたことあるのではないでしょうか。
西暦2000年に起きた大災害”セカンドインパクト”により、世界の人口の半数が失われた。その15年後の世界が舞台。巨大な人造人間”エヴァンゲリオン”と使徒と呼ばれる敵との戦いを描く。
2020年6月には「シン・エヴァンゲリオン」も公開される予定です。エヴァンゲリオンに興味はあるがまだ観たことないという方は、動画配信サービスの”U-NEXT”で観ることができます。
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残酷な天使のテーゼ
- 作詞:及川眠子
- 作曲:佐藤英敏
- 歌唱:高橋洋子
”エヴァンゲリオン”は観たことがなくとも”残酷な天使のテーゼ”は聴いたことある!…という方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、この曲はJOUSOUNDの平成カラオケランキングでアニメ部門はもちろん、総合部門でも1位なのです!
そしてオリジナルバージョンを歌っているのは歌手の高橋洋子さんですが、名曲ゆえにカバーされている数も半端ではありません。
有名なところでは、マーク・パンサー、GLAY、中川翔子さん、XJapanのToshIなど多くのアーティストによってカバーされています。
また、ジャズバージョンなど様々なジャンルのアレンジでも演奏されています。個人的に好きなのは次のバージョンです。
残酷な天使のテーゼの楽曲分析
”残酷な天使のテーゼ”のコード進行はこちらのサイトを参照してください。
この曲のオリジナルキーはCmですので、Cナチュラルマイナーダイアトニックコードを中心に構成されています。
イントロ
イントロのコード進行は次のとおりです。
4度進行
イントロのコード進行をみると、Cm→Fm→B♭→E♭という流れが、きれいな4度進行となっています。この進行はイントロだけでなく、サビでも用いられています。
4度進行というのは、コードが4度間隔で進行していくもの。特徴はコードの流れが非常になめらかであること。そのためメロディを邪魔することなく自然と聴かせることができます。JPOPでもよく使われる定番コードです。
〇度という考え方はこちらの記事で解説しています。
キー別に4度進行の構成音を覚えるには5度圏を覚えてしまうのが手っ取り早いです。
上図が”5度圏”と呼ばれるもので、時計回りで追っていくとコードの関係性が5度ずつ変化しているのが分かります。反時計回りだと4度間隔です。
Aメロ
次、Aメロのコード進行です。
平行調による転調
この曲のキーはCmというマイナーキーであるはずなのに、Aメロの雰囲気はなんだか明るくなった感じがしませんか?
その理由は始まりのコードにあります。
上図をご覧いただければ分かるとおり、始まりのコードはE♭です。実はこのE♭から始まった段階でE♭メジャーダイアトニックの調性を感じるようになっています。つまりマイナーからメジャーに調性が変化しているのです。
E♭はCmに対する平行調にあたります。
平行調とは、始まりの音が違うだけで、スケールを構成する音はまったく同じものをいいます。
始まりの音が違うだけで、同じコードを使用しているのが分かりますね。
平行調を分かりやすく説明すると、「キーの中で使われる基本の7つの構成音が同じであるメジャーキーとマイナーキーの関係」といえます。
つまりCmキーに対し、一時的にE♭というメジャーキーに転調している形になります。これにより歌詞の内容に合わせ、雰囲気を微妙にコントロールしているのです。
ちなみに平行調を把握するうえでも5度圏は有効です。重なり合って表示されているコードが平行調です。(CmとE♭は重なって表示されています。)
小室サウンドからの影響?
メロディのリズムにも着目してください。
Aメロ出だしから「タータター タタータータタ タタータータ タータータ タータータタ」という16分音符によるシンコペーションを多用したリズムになっています。
これはTM NETWORKの「Get Wild」のBメロやサビで見られるように、小室楽曲のあらゆる場面で多用されています(他にもtrfの「EZ DO DANCE」のAメロや「BOY MEETS GIRL」のサビ、篠原涼子の「恋しさとせつなさと心強さと」など、90年代前半の楽曲によく見られます。)
また、フレーズの切れ目である終止部分でsus4コードが多様されているのも、小室サウンドの特徴です。
Bメロ
Bメロも引き続きメジャーキーですが、それは歌詞で次のように歌われているのと関係しています。
だけどいつか 気づくでしょう その背中には
遥か未来 目指すための 羽根があること
希望への旅立ちを促す内容であることからのメジャーキーであり、より細かく刻まれたリズムとともに、前向きな雰囲気を押し出しています。
サビ・間奏
サビでは一転してマイナーキーに転調します(イントロと同じコード進行)。
この調性変更も歌詞の進行とシンクロさせるためでしょう。
残酷な天使のテーゼ 悲しみが そしてはじまる
抱きしめた 命のかたち その夢に目覚めたとき
誰よりも光を放つ 少年を神話になれ
おそらく希望の地へ向かうのではなく、彼らを待ち受けるのは”残酷な天使のテーゼ(命題)”であり、その中で”少年を神話になれ”と突き放している。
そんなシビアな現実感を、うまく転換しています。
そしてサビの盛り上がりをバックアップしているのが、歯切れのよいブラスアレンジです。ブラスアレンジは90年代のB’zによくみられた手法で、時期的にも少なからず影響を受けたかもしれません。
そして間奏では、16分のシンコペーションを入れたピアノによるきざみですが、このダンサブルなバッキングこそ、trfなどでも見せている小室サウンドの代表的なものです。
まとめ
”残酷な天使のテーゼ”に関する楽曲分析をまとめます。
- 4度進行を多用した曲構成
- 平行調による転調(Cm→E♭→Cm)を使って歌詞世界とシンクロするよう、雰囲気に変化をつけている
- メロディラインは16分音符のシンコペーションを多用
- 曲の区切りとなる終止部分にはsus4コードを多用
- サビのシンセブラスアレンジで曲に勢いを持たせる
- ③~⑤は90年代の小室哲也やB’zの影響が垣間見れる
コード進行的にはクセのない4度進行を行うことで、歌詞を聴かせることに重きをおいていると解釈できます。
それだけエヴァンゲリオンとこの曲はより世界観を共有することができたと思います。
それと、これだけ長きに渡って愛されていることや、カラオケなどでもいまだに人気があるのは、飽きのこないシンプルな作りだからでしょうね!
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